京都新聞HD「違法報酬19億円」問題の隠れた焦点 大株主に利益供与、問われる「報道機関」のあり方
この関係者によると、利益供与問題の裏側には「報道をどうするか」という大テーマが横たわっており、これこそが今の問題の核心なのだという。
「新聞社グループのトップ企業であるHDに新聞事業に理解のない人たちが入ってきて、『新聞事業は儲からないから、新聞事業は中核ではない』『(ワン・オブ・ゼムの)複合事業体を目指す』と言い始めた。そこにも大きな対立があります」(京都新聞関係者)
社内ではこの間、「HD幹部は新聞事業をやめてもいいと判断している」「HD側は地域社会と報道の役割にはまったく関心がないようだ」といった声も水面下で飛び交った。
白石家のグループと大西社長のグループが対峙
現在、京都新聞グループでは、白石家やそれに連なる幹部たちと、2021年に京都新聞社長に就任した編集出身の大西祐資氏らのグループが対峙する形で事態が進行している。大西社長の声はなかなか外に伝わってこないが、京都新聞関係者は次のように断言する。
「地域の報道機関としての使命をまっとうするには、この問題を何としても片付けねばと大西社長は考えている。新聞社の厳しい経営が続く中、これだけの資金を外部に流出させておいて府民や読者の信頼が得られるわけがない、こんな前近代的な経営を続けていては報道機関としての信頼はとうてい回復できない、と」
実際、利益供与を認定したHDの内部調査結果は、子会社・京都新聞社の「社告」として連日、紙面で詳報された。どこまで踏み込んで報道するかを逡巡していた編集現場に対し、大西社長は「新聞社の判断、責任として、内部調査の内容は紙面やデジタルで詳しくわかりやすく報道しよう」と編集局長らに言い、徹底した説明責任の実行へと踏み出した。
前出の関係者は「“隠れ”も含めて白石家側にくみする者は、今もあちこちにいます。白石家に忠誠を誓っているというよりも、社内的な立身出世に導いてくれた先輩たちを裏切れないということでしょう。そうした人たちは依然、大西社長解任の機をうかがっているはずです」と言う。
その見方を裏付けるかのように、今年6月の株主総会前には、改革派の大西社長が解任されるとの情報が社内で飛び交った。組合が会社側との度重なる団体交渉の場で、「(大西)社長が再任されないという話があった。どうなっているのか」と会社側の真意をただす場面もあった。
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