京都新聞HD「違法報酬19億円」問題の隠れた焦点 大株主に利益供与、問われる「報道機関」のあり方

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HDとその子会社2社(京都電子計算、京都新聞プロパティーズ)は報酬の返還を求めて京都地裁に提訴。その中でHD側は、白石氏は業績や人事の報告を自宅で受けるなどしたにすぎず、助言が取締役会などで協議されたことはなかったと主張した。一方、報道によると、被告の白石氏側は「こちらから報酬を要求したり、圧力をかけたりしたことはない。法的に争っていきたい」と反論している。

これとは別に、京都新聞の記者2人が所属する関西新聞合同ユニオンは今年6月、白石氏らを会社法違反(利益供与)の疑いで京都地検に告発した。10月には、HDの株主でもある記者1人が報酬返還請求訴訟の原告として共同参加することも決まった。

ここまでが京都新聞問題の経緯だ。この流れだけを見れば、過去の不正に気付いた経営陣と社員らが浄化作戦に乗り出したように映るが、ことはそう簡単ではない。

HDの子会社からも資金が流出していた

一連の利益供与では、HDだけでなく、HDの子会社からも資金が流れ出ていたことも重大なポイントだ。

HDの内部資料によると、HDの前社長(今年6月の株主総会・取締役会で代表権のない取締役に)は、子会社の京都電子計算の社長などを務めていた2014年以降、総額5106万円を浩子氏側に提供したとされる。現在のHD社長もやはり子会社の取締役時代に計800万円余りの資金供与に関わっていたという。

HDは現在、白石氏側に資金返還を求めている立場だが、過去の資金供与に関わってきた人物が現在もHDや子会社の経営に関わっているという図式なのだ。京都新聞関係者は、取材にこう語った。

「白石家にすり寄ることで自分の地位を守り、出世してきた者が、新聞事業を牛耳ってきた。それが最大の問題です。そういう人物しかHDにはいないから、こんな問題が起きる。報道やジャーナリズムには関心がない」

次ページ問題の核心は「報道をどうするか」
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