起訴で支持率上昇も「トランプ再登板」が難しい訳 業務記録の改ざんなどの罪状、本人は無罪主張
アメリカのトランプ前大統領が不倫相手のポルノ女優らに口止め料を支払い、隠ぺいのために業務記録を改ざんしたとして起訴された。トランプ氏は「民主党の陰謀だ」と全面否定し、裁判は長期化しそうだ。
2024年秋の大統領選に出馬表明しているトランプ氏は、共和党内の予備選を勝ち抜く構えで、トランプ支持勢力は結束を強めている。今回の起訴が、予備選ではトランプ氏にとって「追い風」になる可能性もある。しかし、民主党候補(今のところバイデン大統領が続投をめざす方針)と共和党候補との対決となる本選では、裁判を抱えるトランプ氏にとって「逆風」は避けられない。共和党以外に支持が広がらないためだ。
民主、共和両党が互いに陣地を固めたうえで無党派層を奪い合うというアメリカの二大政党制がトランプ氏の再選を阻むことになりそうだ。その構図を探ってみよう。
巧みな戦略だったトランプ氏の2016年の大統領選
2016年秋の大統領選は、民主党のヒラリー・クリントン氏と共和党のトランプ氏の一騎打ちだった。当時、私は現地で激戦の様子を取材したが、印象的だったのが、民主党優勢といわれたペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシン各州でトランプ氏が勝利したことだ。ペンシルベニア州の工業地帯で開かれたトランプ氏の集会で、白人労働者が「トランプ支持」を熱狂的に訴えていたことを鮮明に覚えている。
トランプ陣営の戦略は巧みだった。民主党支持の白人労働者を取り込む作戦を展開したのだ。
民主党のオバマ政権が進めた市場開放政策が、アメリカの雇用を奪い、白人労働者の失業を増やしている。クリントン候補もオバマ政権の政策を引き継ぐだろう。そうしたトランプ氏の訴えが白人労働者に浸透し、ペンシルベニア州などでのトランプ氏の勝利につながった。クリントン陣営は民主党の支持基盤が切り崩されることはないだろうと油断していた。
アメリカの民意を概観すると、民主、共和両党がそれぞれ約40%ずつの基礎票を固め、中間にいる約20%の無党派層を奪い合う構図となっている。
トランプ氏は2016年の大統領選で、接戦州を中心に民主党支持層に手を突っ込み、白人労働者の票を奪った。仮に3%の票が民主党から共和党に移ると、プラス・マイナスで計6%の効果がある。この作戦がトランプ当選に大きく貢献したことは間違いない。
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