起訴で支持率上昇も「トランプ再登板」が難しい訳 業務記録の改ざんなどの罪状、本人は無罪主張

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今回の起訴によって、トランプ氏が共和党支持者の中で勢いを増したことは確かだ。「民主党政権の被害者」という同情論もあるだろう。

しかし、2016年の大統領選のように民主党支持の白人労働者にトランプ氏への支持が広がるわけではない。不倫相手への口止め料といった起訴の内容を見ても、無党派層がトランプ氏になびくとは思えない。つまり、共和党内の一部の保守派を固めることにはなるものの、トランプ支持が拡大するわけではないのだ。

仮にトランプ氏が共和党の候補者に選ばれたとしても、共和党の穏健派は離れ、無党派層はそっぽを向き、民主党支持の白人労働者も支持しないとなれば、トランプ氏の劣勢は確実だ。予備選有利、本選不利という構図である。アメリカの二大政党制は、共和党以外に支持が広がりそうにないトランプ氏にとって冷酷なシステムといえるだろう。

そうした事情が共和党支持者に共有されていけば、「本選で勝てない候補を予備選で支持しても意味がない」という反応が広がるのは当然だ。

大統領選の序章の幕開けにすぎない

トランプ氏の予備選での勢いも失速していくのではないか。そんな思いでトランプ氏の動向を見ているのが、共和党の他の候補者たちだ。最有力といわれるデサンティス・フロリダ州知事、トランプ氏との距離を広げつつあるペンス前副大統領、出馬表明したヘイリー前国連大使やハッチンソン前アーカンソー州知事……。彼ら彼女らはトランプ氏がどんな形で失速していくのか、虎視眈々と見守っているはずだ。

仮にトランプ氏に代わる新たな共和党候補が誕生すれば、民主党側も80歳のバイデン大統領に代わる若い候補者を選ぶ動きが強まるだろう。ハリス副大統領やニューサム・カリフォルニア州知事らの名が取りざたされている。トランプ氏の起訴は、一時的にトランプ氏の勢いを強めたように見えるが、2024年秋の大統領選に向けた序章の幕開けにすぎないのである。

星 浩 政治ジャーナリスト

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ほし ひろし / Hiroshi Hoshi

1955年生まれ。東京大学教養学部卒業。朝日新聞社入社。ワシントン特派員、政治部デスクを経て政治担当編集委員、東京大学特任教授、朝日新聞オピニオン編集長・論説主幹代理。2013年4月から朝日新聞特別編集委員。2016年3月からフリー。同年3月28日からTBS系の報道番組「NEWS23」のメインキャスター・コメンテーターを務める。著書多数。『官房長官 側近の政治学』(朝日選書、2014年)、『絶対に知っておくべき日本と日本人の10大問題』(三笠書房、2011年)、『安倍政権の日本』(朝日新書、2006年)など。

 

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