三島由紀夫に「嫌い」と言われ、太宰治が「笑った」訳 対極にいるように見える2人の文豪の共通点

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三島由紀夫と太宰治
三島由紀夫(左)と太宰治(右)の興味深い関係に迫ります(左写真:picture alliance/アフロ、右写真: topaz☆/PIXTA)
学校の授業では教えてもらえない名著の面白さに迫る連載『明日の仕事に役立つ 教養としての「名著」』(毎週木曜日配信)の第27回は、2人の文豪、太宰治と三島由紀夫の興味深い関係について解説します。
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太宰治と対極にいる文豪「三島由紀夫」

太宰治が『走れメロス』と相反するような人間性であったことを前記事では解説した。だがむしろ当時の文豪でもっとも『走れメロス』的な作家とは誰だったのだろう? そう考えてみると、1人の文豪の名前が思い浮かぶ。三島由紀夫。彼こそが、太宰治の対極にいる男といってよいのではないだろうか。

三島由紀夫は、太宰治のことを毛嫌いしていた。それは例えば平安時代に紫式部が清少納言の悪口を書いたように(『紫式部、現代のSNS的な痛烈「清少納言」批判の中身』参照)、ともに時代を代表する作家でありながら作風が異なる作家同士は嫌悪を示すことが多い。力のある作家同士が「あいつだけは無理だ!」と言うのは、才能があるからこそ、同じく才能のある(が、自分とはベクトルの異なる)相手の力量をよくわかるからなのかもしれない。

三島由紀夫は、太宰治のことを、エッセイの中で以下のように評する。

太宰のもっていた性格的欠陥は、少くともその半分が、冷水摩擦や器械体操や規則的な生活で治される筈だった。生活で解決すべきことに芸術を煩わしてはならないのだ。いささか逆説を弄すると、治りたがらない病人などには本当の病人の資格がない。(『小説家の休暇』)

何とも三島らしい発言である。三島由紀夫の趣味は筋トレだった。一時期からボディビルにハマっていた彼は、自分を管理し、マッチョになることを目指していたのだ。つまり「冷水摩擦」や「器械体操」や「規則的な生活」というのは、三島自身が自らに課していた、健康的であるための習慣の1つだったのだろう。

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