HBSでは優れた戦略をたった1つの図で考える ケース問題「従業員のES向上で売上を伸ばせ」

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確かに、戦略は計画です。しかし、戦略ではない計画も存在します。では、戦略に該当する計画とはどのようなものなのでしょうか。長期的、多面的、本質的といった条件を付与したところで問題の解決にはなりません。これらの条件は依然として抽象的であるからです。

優れた戦略に必要な2つのレバー

ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)の競争戦略分野の中心的人物であるフェリックス・オーバーホルツァー・ジー教授は、「戦略」についてきわめてシンプルな定義を与えています。それは、WTP(支払意思額)を高め、WTS(売却意思額)を低くする一連の計画およびその活動のことを指します。

WTPとは製品・サービスに対し顧客が支払うであろう上限額のことです。たとえば、ネットオークションで出品されたバッグに対し、1万円までなら落札してもよいと思ったら、WTPは1万円となります。もし4000円で落札できたとすれば、その人の満足度(顧客満足度または顧客歓喜)はWTPから落札額を引いた6000円となります。

一方、WTSとは従業員やサプライヤーが企業で働くための最低限の報酬のことです。従業員の場合、このWTSは職場環境によって大きく左右されます。職場が危険であったり、いつ解雇されるかわからない不安定なものであったりした場合、従業員が望む報酬の最低限度額は増加します。逆に、解雇の心配がなく、自宅から近く、魅力的な仕事ができる職場であれば、報酬が低くても働きたいと思うかもしれません。従業員やサプライヤーが受け取る実際の報酬とこのWTSとの差額が、従業員満足度、サプライヤー余剰利益となります。

企業が創造する価値とは、このWTPとWTSの差に該当することになります。そしてこの創造された価値を、顧客、従業員・サプライヤー、企業の間で分け合うことになるのです。WTPと価格の差額は顧客の取り分、価格と報酬との差額が企業の利益、報酬とWTSの差額が従業員・サプライヤーの取り分となります。これらを図示したものは、バリュースティックと呼ばれています。

(出所:『「価値」こそがすべて!』)

WTPとWTSの差(=創造された価値)が大きいほど、顧客、従業員・サプライヤー、企業の利害関係者が潤うことになります。そのため、企業の主要な目的は、この価値創造を行っていくことになるのです。

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