「指を失くした技能実習生」悲劇を救う"ある存在" 香川県に「モスク」をつくったムスリムは語る
香川県にモスク建立の動きあり
「香川県にモスクをつくろうとしているインドネシア人がいる。その男は、溶接工で、長渕剛が好きらしい」
その噂を聞いた私は、背後のヘッドライトに煽られながら、車で香川県のX市に向かった。2019年9月某日の夜7時。私はその男と会うために、瀬戸内海に面した工場地帯を抜け、やがて住宅団地の神社の駐車場にたどり着いた。
モスクがイスラム教の集団礼拝所だとは知っていたが、タイル張りの細密画で装飾された宗教施設という印象が強く、あのような建造物が香川県の地方都市にできることが信じられなかった。
しかし、情報元のBさんは信頼できる人だった。Bさんはサーファーで、インドネシアに波を求めて通ううちにムスリムに改宗した。インドネシア人技能実習生をボランティアで世話していたので、コミュニティー内部に詳しい人だったのだ。
フラフラ歩くサラリーマンや、子供を乗せチャリで爆走する女性とすれ違いながら、街灯を頼りに指定された住所へと歩く。一体どんな男なのだろうか? モスクをつくろうというくらいだから、さぞ信心深く、真面目な人なのだろう。警戒心が強い可能性もある。追い返されたらどうしようか。いや、それよりも長渕が好きというのがひっかかる。
そんなことを考えていると、民家から男が現れ、巨体を揺らしながら近づいてきた。褐色の肌に彫りの深いインド系の顔だ。身長は180㎝くらいあり恰幅もよく、ムスリムがかぶるらしい刺繡が施された帽子をかぶっている。受けとった怪しい印象に、私は思わず身構えた。男は大きな瞳をこちらに向け、口を開いた。
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