大半の国では、以上の問いに答えが出るよりも速いペースで高齢化が進んでいる。危険なのは、高齢者がほどなく自身を世話する手段や能力を欠くようになることだ。
ビスマルクの初期設定からの大きな乖離
先の1世紀をかけて人間の寿命が延びたのは、すばらしい達成だった。しかし、それは重大な困難を引き起こすことになった。
労働年齢にあたる人々が、増加の一途をたどる高齢者の生活を支えなければならなくなったのだ。
日本は労働年齢(20-64歳)の人口に対する65歳以上の老年人口の割合が最も高い国だが、この比率は今後50年間で、先進国全体で2倍になると見込まれている。
その時点では、労働者1人が少なくとも1人の高齢者を支えることになっているだろう。
社会は、個人が受給できる退職後の生活費について政治的プロセスを通じて決定し、何歳から年金の支給対象になるかを定めている。ドイツのビスマルクが1889年に世界に先駆けて強制加入年金の仕組みをつくったとき、退職年齢は70歳と設定されていた。
当時の平均寿命を考えると、国が年金を提供しなければならない期間は平均で7年間だった。その後、1916年にドイツの定年は65歳に引き下げられた。
それが今日意味するのは、政府がおよそ20年分の年金を支払わなければならないということだ。
同様のパターンはいま、ほぼすべての国で起きている。定年が延びるスピードが平均寿命の延びるスピードより遅いため、結果的に年金生活が長くなっているのだ。
ほとんどの中所得国や高所得国では、現在の労働者は人生のおよそ3分の1の時間を定年後に過ごすことになる。
働くことに費やされない時間の延びがことに大きいのは、オーストリア、ベルギー、チリ、ドイツ、ルクセンブルク、ポーランド、スロバキア、スペインだ。
基本的な問題は、定年後の年数が仕事をしていた年数に比較してあまりに長くなっていることだ。だから、労働生活中に年金に投入した金額が、老いたときにサポートが必要になる年数分を賄いきれないのだ。
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