経済人類学者が描く「ポスト資本主義経済」の勝算 「より少ないこと」が世界に豊かさをもたらす

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それに気づけば、わたしたちははるかに自由に、かつ合理的に、考えられるようになる。地球温暖化を1.5℃以下に保ち、生態系の破壊を逆行させるための唯一実行可能な方法は、高所得国が過剰な資源採取とエネルギー利用を減速させることだと、科学者たちははっきり述べている。

資源の消費を減らせば、生態系にかかる圧力が減り、生命の網は、つながりを取り戻すチャンスを得る。合わせて、エネルギーの消費を減らせば、より簡単かつ迅速に、つまり数十年ではなく数年ほどで、クリーンエネルギーに移行でき、連鎖反応が始まる危険なティッピングポイントに至らずにすむだろう。

どうすればそうできるだろうか。ポスト成長経済では、その一部は効率の向上によって成し遂げられるだろう。しかし、必要性の低い生産形態を縮小することも不可欠だ。

これが「脱成長」と呼ばれる概念で、経済と生物界とのバランスを取り戻すために、安全・公正・公平な方法で、エネルギーと資源の過剰消費を計画的に削減することを意味する。

「脱成長」のために何をすべきか

脱成長の素晴らしい点は、経済を成長させないまま、貧困を終わらせ、人々をより幸福にし、すべての人に良い生活を保障できることだ。それこそが脱成長の核心である。

では、実際には、どうすればよいのだろう。実に簡単なことだ。現在の経済学では、必要であってもなくても経済の全部門はつねに成長しなければならないという考え方が支配的だ。そのような経済運営は、良い時代にあっても非合理的であり、生態系が緊急事態に陥っている時代にあっては明らかに危険だ。

その考え方から脱却し、成長させるべき部門(クリーンエネルギー、公的医療、公共事業、環境再生型農業など)と、必要性が低いか、生態系を破壊しているので根本的に縮小すべき部門(化石燃料、プライベートジェット、武器、SUV車など)を見極めるべきだ。

また、人間の必要を満たすためではなく、利益を最大化するために設計された生産様式を縮小することもできる。製品の寿命をあえて短くする計画的陳腐化や、わたしたちの感情を操作し、現状に不満を抱かせる広告戦略などがその例だ。

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