なぜアメリカ株の大幅下落を警戒すべきなのか 金融の混乱は収まっても不況はこれから深刻化

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破綻したシリコンバレーバンクを買収することになったファースト・シチズンズ・バンクシェアーズグループ。アメリカの金融不安は沈静化しているが、銀行経営は厳しい状況が続く(写真:ブルームバーグ)

アメリカの代表的な株価指標であるS&P500種指数が方向感を欠いている。同指数は年初来4000ポイントを中心に上下する展開が続いている。

2022年央以降、冴えないマクロ指標やテック企業の業績悪化を受けて、同国株に対するアナリスト予想は慎重になっており、予想EPS(予想1株利益)の低下が続いている。具体的に言えば、予想EPSは2020年1月に175ドルだったものが、2022年6月に238ドルまで増加した後、2023年3月下旬時点では225ドル程度まで減少している。

アメリカ株の下落は限定的でも、企業業績は悪化中

だが、その割には下値は限定的だ。これはFED(アメリカ連邦準備制度、連銀)の利下げ観測などが支えになっているとみられる。また、3月入ってから相次ぐ銀行破綻に伴う金融市場の混乱もいったんは沈静化している。ジャネット・イエレン財務長官が「銀行預金の安全を確保するため、さらなる措置を講じる用意がある」という意思表示を繰り返していることが奏功した形だ。

ただし、企業業績(≒予想EPS)のさらなる低下には注意が必要だろう。アメリカ企業業績と一定の連動性を有するISM製造業景況指数は2月に47.7と4カ月連続で50を割り込んでおり、すでに生産活動の停滞を示す水準にある。

実は、この水準はリーマンショックの最悪期や新型コロナウイルスの感染爆発初期の混乱局面を除くと最も低い水準であるから、通常の景気循環パターンに従えばそろそろ下げ止まりが期待されるところだ。だが、4月3日に発表される3月分は一段の低下が示唆されている。

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