インフレと利上げが進む中、米国の中堅銀行が相次いで破綻、火の粉は世界的大手クレディ・スイスにまで飛んだ。銀行危機はいったん後退したが、余波はどう広がるのか。
3月に米欧市場を襲った銀行危機は、落ち着きを取り戻しつつある。
同月10日にシリコンバレーバンク(SVB)、12日にシグネチャーバンクが預金取り付け騒ぎで相次いで破綻したアメリカでは、米連邦預金保険公社(FDIC)と米財務省が即座に預金の全額保護策を打ち出し、FRB(米連邦準備制度理事会)も過去最大級の流動性供給を展開して鎮火に当たった。これにより、取り付け騒ぎの連鎖をいったん抑え込んだ格好だ。
一方、米銀破綻が飛び火した欧州では、2期連続赤字で経営不振に陥っていたクレディ・スイスの株価が急落。スイス政府の後押しの下、同国のUBSによる救済買収が決まった。
リーマン危機後の銀行破綻抑止策の1つであるAT1債の取り扱いをめぐり市場に疑心暗鬼が蔓延した(クレディの件では無価値になったため)が、信用不安の連鎖自体はひとまず回避された。
今回の銀行危機の最大の特徴は、それが歴史的な高インフレの下で生じたことだ。
例えば2010年代に低インフレ・低金利長期化による「日本化」がささやかれた米欧で銀行破綻の連鎖が起きていたらどうだったろうか。一気にリスクオフがグローバル金融市場を襲い、資産価格の大幅下落を招いていただろう。また、総需要が弱い中での信用収縮を招き、実体経済のデフレ化も加速させたに違いない。
金利上昇で含み損
しかし、足元の状況は大きく異なる。もちろんネガティブな側面は残っているものの、銀行不安の下でも、世界経済は堅調さを維持している。また株価に至っては、3月30日時点でSVB破綻直前の水準を3〜5%以上も上回っている。
単純に「銀行不安=経済・株価の悪化」とならない現状は奇異に映る。これまでの常識が通用しない経済や金融政策、株価についてその行方を総点検していこう。
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