なぜアメリカ株の大幅下落を警戒すべきなのか 金融の混乱は収まっても不況はこれから深刻化

拡大
縮小

というのも、ISM製造業景況指数の先行指標とされるNY連銀製造業景況指数とフィラデルフィア連銀製造業景況指数は、双方とも3月に急落しているからだ。

両指数をISM製造業のウェートを用いてISM換算し、それを合成した数値は42.3と、異例の低水準へと滑落する姿になっている。筆者は、ISM製造業は春節明けの中国経済回復などによって2月は下げ止まったものの、3月は再び景気の弱さを印象付ける結果になる可能性が高いと判断している。

実質金利の高止まりも株価の懸念材料

また実質金利(10年物価連動国債利回り)の高止まりも、株価にとっての懸念材料だ。実質金利とPER(株価収益率)の関係について、両者の絶対水準を比較することは必ずしも有用ではないが、それでも実質金利が1.2~1.5%近傍にある状況で、PERが17~18倍程度を維持している現在の状況には違和感を禁じ得ない。

両者が乖離している背景には、株式市場参加者が業績改善(≒EPS反転増加)か、金融引き締めの終了(≒実質金利低下)もしくはその両方を前提に置いているという楽観が浮かび上がる。

その点、FEDがインフレ退治と金融不安抑制の板挟み状態にあり、動くに動けない状況にあることを再度認識しておく必要がある。もしインフレが問題になっていない状況であれば、ISM製造業の50割れや金融不安(アメリカ銀破綻)など景気減速を象徴する状況に直面した際、FEDは金融緩和策を講じ、実質金利低下を促すことができる。

しかしながら、現在がそうした状況にないことは明らかだ。このような状況でISM製造業が悪化するなど、投資家の期待を削ぐデータが相次げば、アメリカ株は再度大幅な下落に見舞われる可能性がある。そのような事態を防ぐには、やはりインフレが沈静化し、FEDの金融引き締めが終了することが重要になってくる。

次ページ長短金利差と銀行貸し出しの関係とは?
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT