4月「遺産分割ルール」変更で知っておくべき事 「特別受益」「寄与分」主張できる期間が10年に

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「特別受益」とは、一部の相続人が亡くなった人(被相続人)から生前贈与や遺贈、死因贈与で受け取った利益のことです。特別受益が認められると、特別受益を受けた人が相続する財産は法定相続分より少なくなります。

(例)父が亡くなり、相続人は妻・長男・次男の3人。相続財産は預金3000万円。長男は海外留学費用として400万円の援助を受け、これが特別受益と認められた。

(表:筆者作成)

特別受益考慮なしだと妻が2分の1の1500万円長男と次男が4分の1の750万円ずつを相続しますが、特別受益考慮ありでは妻が1700万円(相続財産3000万円+特別受益400万円)×(法定相続分1/2)、長男が450万円(相続財産3000万円+特別受益400万円)×(法定相続分1/4)-(特別受益400万円)、次男が850万円(相続財産3000万円+特別受益400万円)×(法定相続分1/4)となります。

注意しないと相続できる財産が少なくなる?

次に、「寄与分」とは、一部の相続人が、亡くなった人(被相続人)の事業を手伝っていた、老後の療養看護をした等により被相続人の財産の維持や増加に特別の寄与(貢献)をしたと認められたときに、相続分を増やす規定です。寄与分のある人が相続する財産は法定相続分より多くなります。

(例)父が亡くなり、相続人は妻・長女・次女の3人。相続財産は預金3000万円。次女が、被相続人の療養看護をしていたとして、寄与分が400万円と認められた。

(表:筆者作成)

寄与分考慮なしだと妻が2分の1の1500万円長女と次女が4分の1の750万円ずつを相続しますが、寄与分考慮ありでは妻が1300万円(相続財産3000万円-寄与分400万円)×(法定相続分1/2)、長女が650万円(相続財産3000万円-寄与分400万円)×(法定相続分1/4)、次女1050万円(相続財産3000万円-寄与分400万円)×(法定相続分1/4)+(寄与分400万円)となります。

遺産分割で特別受益や寄与分を考慮するかどうかで、相続する金額がかなり変わってきます。

ですが、今回の民法改正により、相続開始後10年を過ぎると、遺産分割において特別受益や寄与分の主張をしても考慮されなくなり、原則として、法定相続分で遺産が分割されることになります(ただし、相続開始から10年を経過する前に相続人が家庭裁判所に遺産分割請求をしたとき等、例外事由もあります。改正後民法904条の3)。この場合、特別受益や寄与分を主張し、それらが考慮されることで法定相続分より多くの遺産を相続できたはずの相続人にとっては、得られるはずの相続できる財産が少なくなってしまうということになります。これらの主張をしたいと思う相続人の方は、相続開始後時間をあけずに遺産分割協議を始める方が多いとは思いますが、「今は忙しいから、落ち着いたら主張すればいいや」と後回しにするのは危険です。

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