テレビ局と制作会社「地位逆転」が韓国で起きた訳 冬ソナ制作会社幹部が語る韓国ドラマの強み
韓流ブームを巻き起こした韓国ドラマ『冬のソナタ』が日本で放映されてから今年で20年。この間、韓国エンタテイントメントの世界での立ち位置は大きく変わり、なかでもドラマのグローバルヒットが目を引く。
その背景には、輸出の好調により十分な制作費の確保が可能になったことなどがある。『冬のソナタ』を制作し、2019年には『椿の花咲く頃』が大ヒットしたPANエンターテインメントの金喜烈ドラマ部門産業本部副社長に、冬ソナとそれ以降の韓国のドラマ業界の変化について話を聞いた。
「冬ソナ」日本進出のきっかけ
――韓国で『冬ソナ』が放映された際、同時間帯の他社のドラマは大型大河だったとか。
名プロデューサーが制作した大河ドラマで放映前から鳴り物入りでした。『冬ソナ』の前に放映したドラマの視聴率がとても低くて、どうなることだろうと思ったのですが、初回から13%の視聴率と好調な滑りだしで最高は21%まであがりました。映像美、穏やかな音楽、俳優たちの演技、そしてストーリーが若い世代に響いたようです。
――当時の韓国ドラマの輸出先を見ると台湾や香港、東南アジアが主だったようですが、日本へ輸出するきっかけは何だったのでしょう?
(1998年に「日韓共同宣言」が出され、韓国では日本の大衆文化が段階的に開放されていった)当時は日本との文化交流が始まっていて、映画では『シュリ』などが日本で上映されましたが、ドラマはありませんでした。当時の韓国のドラマは二十数回と長かったので、現地化するのが難しかったのですね。それが2002年の日本と共催したFIFAワールドカップで文化交流の気運も盛り上がりました。
弊当時の韓国ドラマは台湾や香港、東南アジアへ輸出していましたが、日本のドラマが人気で、放映権料料の高かった日本よりも安価で供給している状況でした。弊社はもともと音盤会社で、ドラマのオリジナル・サウンド・トラック(OST)を手掛けていたので、台湾の会社とはビジネス関係にありましたが、日本とはそんな関係もありませんでしたから、弊社が知的財産(IP)を保有していても、どこに話を持ち込めばいいのか相手すら分かりませんでした。委託していたKBS(韓国の公共放送)がNHKへ『冬のソナタ』(20話)を持ち込んで日本での放映が決まりました。
――作品のIPをめぐってはNetflixで大ヒットした『イカゲーム』以降その重要性がさかんに説かれていますが、当時、制作会社がIPを保有することはめずらしかったのではないでしょうか?
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