テレビ局と制作会社「地位逆転」が韓国で起きた訳 冬ソナ制作会社幹部が語る韓国ドラマの強み

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PANエンタテインメントでは現在、テントポール作品(1年のラインナップの中で大きなヒットを見込み全体を支える作品)の撮影が進められている。脚本は2019年に大ヒットした『椿の花が咲く頃』のイム・サンチュン氏、演出は繊細な演出が話題になったヒット作『マイ・ディア・ミスター 〜私のおじさん〜』(2018年)などのキム・ウォンソク監督が務め、主役には人気スター、パク・ボコムとイ・ジウン(IU)が決定しており、韓国内外で話題になった。

撮影は3月中旬から始まっており、来年放映予定とされ、制作費は600億ウォン(約60億円)といわれる。これは『イカゲーム』の制作費およそ250億ウォン(約25億円)、『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』で報じられた制作費200億ウォン(約20億円)を大きく上回る。

IPをいかに確保するかが課題に

『イカゲーム』はNetflixから投資を受ける代わりにIPを譲渡し、グローバルメガヒットを記録したにもかかわらず二次的な収益をまったく得られなかった。一方、『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』はNetflixからの投資を断り、放映権料料のみを販売し、IPを保有したことが韓国では大きな話題となった。

そのNetflixでは、競合他社の存在もあり、韓国ドラマのオリジナル作品が年々増加しているが、韓国ドラマ評論家は、「アメリカに比べると韓国ドラマのコストは格段に低価格で抑えられますから、コンテンツのよさ、世界での人気に加えてコストの面でもNetflixオリジナルの韓国ドラマが増えてきているのだと思います」と話していた。

韓国政府は、これまでもドラマ制作においてセット場を建設したり、制作費については補助金のような形で支援してきたが、『イカゲーム』がグローバルヒットを記録したにもかかわらずIPを保有できなかったことを教訓に昨年から「OTT特化放送映像コンテンツ制作事業」を始めている。

これは国内のOTTと制作会社が共にIPを保有できるようにする目的で、今年は、昨年の116億ウォン(約11億円)から454億ウォン(約45億円)と予算を大幅に拡大しており、選ばれた作品には最大30億ウォン(約3億円)を支援するという。

日本で韓流を巻き起こした『冬のソナタ』から20年。繰り出すように作品を世界に送り出してきた韓国ドラマの存在感は「韓流」の枠を超えたようにみえる。

菅野 朋子 ノンフィクションライター

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かんの ともこ / Tomoko Kanno

1963年生まれ。中央大学卒業。出版社勤務、『週刊文春』の記者を経て、現在フリー。ソウル在住。主な著書に『好きになってはいけない国』(文藝春秋)、『韓国窃盗ビジネスを追え』(新潮社)がある。

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