テレビ局と制作会社「地位逆転」が韓国で起きた訳 冬ソナ制作会社幹部が語る韓国ドラマの強み

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――動画配信サービスの登場は韓国のドラマ業界へどんな変化をもたらしたのでしょう?

会社間の競争がとても厳しくなりました。プラットフォームに選択してもらうには、とにかくいいコンテンツを作るほかありませんが、競争が激しいがゆえによいコンテンツを生み出しているともいえます。

冬ソナの日本でのヒット、中国でのドラマ人気、デジタル環境の整備、OTTの登場と何段階かを経て、俳優や脚本家へのギャランティの上昇、コンテンツを制作するためのスタッフの人員増などもあり、制作費が高騰するなど、ドラマ業界を取り巻く環境は一変しました。

テレビ局は高騰した制作費にはもはや耐えられなくなってしまった。デジタル環境も開かれて海外とのビジネスも制作会社が直接するようなりましたから、テレビ局は国内の放送だけになるなど昔のテレビ局と制作会社では力の中心が動きました。

ドラマの収益構造でいえば韓国市場は狭いですから、4割ほどは海外で流通させなければなりません。もし、冬ソナがヒットせず、デジタル環境も作られず、OTTも登場しなければ韓国ドラマは国内市場の6割で得た制作費で制作することになりますから、俳優や脚本家のギャランティも下げて、スタッフも減らして、その枠内で作られたドラマになっていたでしょうね。

200人のスタッフと最長10カ月かけて制作

――韓国ドラマはアジアを超えて世界でも人気となりましたが、韓国のエンタメ業界ではつねに「消えるのではないか」といった危機感についての話がよく出ます。

韓国ドラマがある程度消費されることは持続すると見ています。今のように人気があるかといわれるとわかりませんが、制作する側は作りたいものを好きで制作しています。多いときは200人ほどのスタッフと一緒に現場で8〜10カ月かけてドラマを作ります。すべての神経をその作品に注ぎます。

『コッソンビ熱愛史』(アマゾンプライムビデオにて3月20日から同時配信中)は2年前から私自身も企画から立ち会っていて、ただ、そういう努力はすべての制作会社がやっています。編成や時期、ビジネス戦略によっても人気が左右されますが、1年に何編ものシノプシスを捨ててもいますから、視聴者にあまり関心を持ってもらえなくとも、制作したドラマはいずれも大事な作品です。ずっと作り続けることが大事だと思っています。

――今年は、『冬ソナ』が日本で放映されてから20年になりますが、続編の予定は。

10周年の時にも続編についての話がでましたが、シリーズで制作していなかったので脚本がとても難しいんですね。その時代ともマッチしないといけませんから。

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