テレビ局と制作会社「地位逆転」が韓国で起きた訳 冬ソナ制作会社幹部が語る韓国ドラマの強み

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――撮影は過酷なスケジュールで行われていたとも言われています。

当時の韓国のドラマ制作は撮影しながら放映する方法で、放映日の40〜50日前に撮影を始めるのが通例でした。冬ソナは年明け1月中旬放映でしたが、12月2日にクランクインしています。カメラ照明などのスタッフが1台のバスで移動するのですが、そんな強行軍でも不満をいう人がいなかった時代でした。

ただ、そんな姿も2015年頃まででしょうか。今は少ない時は100人、多くて200人ほどのスタッフで作っていますし、企画から制作に短くて2年ほど、普通は3〜4年ほどかけて制作しています。脚本も70〜80%は書き終えている状態で撮影にのぞんでいます・

――かつてとはずいぶん違いますね。

十分に時間をかけられるようになった最も大きな要因は、十分な制作費を得ることができるようになったことです。冬ソナのヒットから韓国ドラマの輸出はその後危機もありましたが、そのたびに突破口ができましたし、OTT(オーバー・ザ・トップ、ネットを介してコンテンツ配信するサービス)の登場も大きいです。

その間に俳優や脚本家のギャランティもあがり、スタッフの人員も増えて制作費も高騰していますが、今は制作費で悩むことはなくなりました。

日本から中国へと主戦場が変わった

――危機とはどんなものだったのですか?

2010年頃は日本の流通会社の方々が多く来韓して、韓国ドラマを探していました。需要が増えたことで韓国の制作会社は価格をつり上げまして、韓国は傲慢だと言われるようになってしまった。さらに、政治的な背景もあって日本の世論を考慮して日本は韓国ドラマからさっと手を引きました。

どうなってしまうだろうと思っていたら、中国で『星から来たあなた』(2013〜2014年)が大ヒットして、今度は中国市場が大きく開かれて、多くの韓国ドラマが中国市場で消費されました。ところが、中国政府が韓国ドラマを牽制し始めましてね。

審議が強化されて事前審査が行われるようになったんです。長いと数カ月ほどの時間がかかりますから、その間に中国の視聴者はインターネットでドラマをすべて視聴するようになってしまった。しかし、そこへ登場したのがグローバルOTTでした。

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