マツダ「米国通」の新社長に託された重大責務 EV投資の原資確保へ「6万ドル」の高級SUV投入も
2023年3月期のアメリカ販売は、期初の上海ロックダウン(都市封鎖)による半導体不足や新車を日本からアメリカに運ぶ輸送船不足が響き、通期の販売台数は31万3000台と前期に比べ6%減る見込みだ。
しかし、第3四半期(2022年10~12月期)には、レンタカーや企業の社有車など法人向けのフリートを除いた小売台数が過去最多を記録。上級グレードの販売も好調なことから、今期業績予想の上方修正にも寄与した。新車需要は強く、今後も収益源として期待できる。
アメリカでは現在も新車需要に対し生産が完全に追いついていないため、自動車各社のインセンティブはコロナ禍前よりも低い水準にある。その中にあって、マツダの2022年4月~2023年2月のインセンティブの平均は1台あたり851ドル(調査会社オートデータ調べ)と、同期間における業界平均の1209ドルよりも3割低く、販売改革が奏功した形だ。
電動化に軸足を移していく
3月17日の会見で、毛籠氏は自身が担う役割について、「2030年経営方針の具体化、そして実行にある」と強調した。マツダは2022年11月に発表した同方針内で、2030年の世界販売におけるEV比率を25~40%と想定。従来計画の25%から上方修正した。
2024年までの3年間を第1フェーズ、2025~2027年を第2フェーズ、2028~2030年を第3フェーズと位置づけ、段階的に電動化を進めていく計画だ。アメリカへのEV専用車の投入は、「第2フェーズ後半以降という感触で頭の体操をしている」(丸本社長)という。
マツダは他社に比べEVの「出遅れ感」が指摘されることもある。毛籠氏は電動化の時間軸について「マツダのようなスモールプレーヤーはビッグプレーヤーとは違う」とし、「フェーズ3以降、本格的に電動化の取り組みに軸足を移していくと想定し、そうとう準備をしている」と語った。
アメリカではEVシフトへの機運が高まる。2021年8月には、2030年の新車販売の50%以上を電気自動車(EV)または燃料電池車(FCV)とする大統領令が発令された。カリフォルニア州やニューヨーク州などでは、2035年までにハイブリッド車(HV)を含むガソリン車の新車販売を全面的に禁止する規制案が決定されており、自動車各社は電動化が急務だ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら