ホンダ「N-VAN」電動コンバート車、実用化の難題 既存車種の電動化でEV普及は加速できるのか

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MEVバン コンセプト
後ろから見たMEVバン コンセプト(筆者撮影)

すでに実走実験も行われているという試作車だが、電動パワーユニットによる最高出力は14kW(19ps)で、最高速度は70km/h以上。ノーマル車は、NA(自然吸気)エンジンで39kW(53ps)、ターボ仕様で47kW(64ps)を発揮し、高速道路などでは100km/h以上で走ることが可能なことを考えると、今回の電動コンバート車は走行性能でガソリン車におよばない。ちなみに航続距離は75kmだ。

運転席まわり
MEVバン コンセプトの運転席まわり(筆者撮影)

ホンダの担当者によれば、「MEVバン コンセプトは小口配送業者など、市街地などで近距離輸送を行っている企業への提案を検討している」という。とくに同じく同社が開発した、複数のモバイルパワーパックe:を充電できる「パワーパックエクスチェンジャーe:(Honda Power Pack Exchanger e:)」とのマッチングを想定する。

これは、1ユニットで計12個のバッテリーを充電でき、ユニットを拡張すれば、さらに多くのバッテリーを充電できる専用充電器付きの交換ステーションだ。ユーザーは、設置場所で満充電済みのモバイルパワーパックe:に交換することで、充電時間なしで、すぐに走り出すことが可能。バッテリーのシェアリングサービスなどへの活用が検討されている。

交換式バッテリー活用に商機を見出す

パワーパックエクスチェンジャーe:
複数のモバイルパワーパックe:を充電できる「パワーパックエクスチェンジャーe:」(写真:本田技研工業)

ホンダは、2022年4月に「エネオス(ENEOS)ホールディングス」「ヤマハ発動機」「カワサキモータース」「スズキ」らと共同で、「ガチャコ(Gachaco)」という企業を設立。エネオスのガソリンスタンドや商業施設などにパワーパックエクスチェンジャーe:を設置し、シェアリングサービスの展開を目指している。つまり、今回展示されたMEVバン コンセプトも、そうした交換式バッテリーを活用したサービスにより、長い充電時間という電動車の課題を解消することが目的なのだ。ただし、前述のとおり、現状では航続距離が短く、出力もあまり出せない。そこで、まずは近距離輸送を行う事業者などをターゲットにしているのだという。

ちなみに試作車の最大積載量は250kg。ガソリン車のN-VANは最大積載量が350kgなので、荷物もノーマルほど載せられない。これは、車体後部にもパワーユニットを搭載することと、計8個のバッテリーが総重量82.4kgもあることで、車体姿勢がやや後下がりとなってしまうためだ。走行安定性を考慮し、最大積載量も落としているのだという。

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