ヤマハ「音楽で街づくり」取り組んだ意外なその後 事業にはならないと言われてきたが…
ここは約9haの敷地にファミリー向け分譲マンション、学生向け住宅、サービス付き高齢者向け住宅、クリニックモールなどを配する、多世代のための複合施設。多様な人たちを結びつける共通言語としてスポーツと音楽を使うという試みである。
スポーツと音楽、どちらも人を結びつける力のある存在だが、音楽にはよりアドバンテージがある。スポーツでは、例えば大人と子どもでは体格、体力、技術などの差が大きく、同じ土俵には立ちにくい。だが、音楽なら楽器ができなくても手拍子など多くの人にできる参加手段がある。
それ以外では、社員が出勤しなくなったオフィス街を職域バンドの力で楽しい場にする手がないか、介護施設で同じ入居者同士だけでなく、それ以外の外の人たちともつながる手段として音楽を使えないか、リゾート地やホテルに滞在する理由の1つに音楽が有効ではないか、など、それぞれの立場での音楽の使い方を模索している。
窓口はおとまちに限らず、実際の活動も内容によって異なる部署が担当することもあるが、共通するのはコミュニケーションツールとしての音楽がそれぞれの課題解決の手段として再発見されていること。そして、回答としてこれまでの20年以上の積み重ねが生きていること。
「介護については私たちも事業として検討したことがあります。でも、その時には私たちのターゲットが明確ではありませんでしたし、ノウハウも今ほどには積みあがっていませんでした。
一方で施設のあり方も今とは違っていました。しかし、高齢者向け施設が近年、外に開かれるようになり、周辺との関係やつながりが増え、介護業界でもコミュニケーションが以前より重要な意味を持つようになっています。それを考えると、今ならコミュニケーションツールとして音楽がいろいろな分野で役に立つのではないかと思います」(増井氏)
音楽の話になると話が夢みたいに
コロナ禍で多くの人が他人との関係を考え直し、アフターコロナに向けて再構築しようとしている。その中で以前から身近にあった音楽を見直し、「改めて音楽を」というわけである。
もう1つ、面白いと思ったのは「打ち合わせで音楽の話になるとどんどん話が夢みたいになっていく」という増井氏の言葉。「でも、その夢みたいな話が時間を経て実現していたりするのです」。
音楽に夢を見る力、それを現実に変えていく力があるのだとしたら、私たちはアフターコロナにそんな世界を見たいと思っているのかもしれない。
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