ヤマハ「音楽で街づくり」取り組んだ意外なその後 事業にはならないと言われてきたが…
同様に昭島市のフォレストレディース・スウィングオーケストラ、水戸市のMITOレディースビッグバンド、経緯は多少異なるが、岡崎市の小中学生によるジャズキッズオーケストラBeanzzなどが誕生し、活動を続けている。
ドラムサークルのファシリテーターを育成する養成講座も展開。最初は千葉・柏市の社会福祉協議会とともに、2016年から4年間「かしわファシリテーター育成講座」を実施した。
柏市では急速な高齢化で人のつながりの希薄化や孤立が課題になっており、新たなつながりを生む手段として導入された。参加者が輪になってドラムを叩くという単純なもので、身体が動く人であれば年齢、性別、国籍を問わずに誰でも参加できる。
「音楽にはさまざまな境界を軽く飛び越えていく力がありますが、それを生かすためには月に1度のイベントではダメ。街中に音楽を増やすことが大事で、そのためにファシリテートできる人を増やす講座を開催しています」と、ヤマハミュージックジャパンの増井純子氏は話す。
事業としては難しいと言われてきた
2011年に国内最大級の地域音楽祭である仙台の「定禅寺ストリートジャズフェスティバル」に誰でも参加できるオープンステージを提案したり、2015年に始まった「渋谷ズンチャカ!」の運営に携わったりと並べて書くと、おとまちは事業として順調に成長してきたように見える。
だが、実際には事業としては難しいのではないかと言われ続けてきたという。
「15年近く前に事業化して以来、何度も危機がありました。おとまちは、それまでホール内に閉じこもり、外からは見えない存在だった音楽を街に出すことで見える化しようという試み。ホールにも、ヤマハの楽器にもこだわらず、音楽そのものを社会課題の解決のために役立てようというものだったからです」(増井氏)
自社の製品を売るためではなく、音楽を武器にする。ハードではなく、ソフトを売り物にするというわけだが、ハードを売ってきた会社からするとヤマハに限らず、どんな会社でもそれがどれだけ売れるのか、そもそも必要とされているのかを考えると不安がある。
その風向きが変わったのは2021年。福井県と連携協定を結んだのが契機となった。同県では希望する自治体に手を挙げてもらい、楽器を貸し出して体験してもらった上でそこからメンバーを募集してサークルを作り、年に1回コンサートを開くというやり方をしている。鯖江市や越前市などの4市町でスタートし、現在は5市町で活動が行われている。
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