「外資系コンサル」が大学生にこうも人気な理由 「20代で年収1000万円プレーヤー」に憧れ?

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ほかの外資系コンサルタント会社への就職者を見てみよう。

マッキンゼー・アンド・カンパニーは、前述のように東京大生の間で絶大なる人気がある。年々、ブランド力をつけている。同社には慶應義塾大から5人就職している。マッキンゼーを有名にしたのは経営コンサルタントの大前研一氏、経済評論家の勝間和代氏であろう。

彼らがテレビや新聞、雑誌においてさまざまな発言をすると、経歴にマッキンゼーという聞き慣れない社名が登場し、情報に敏感な若い世代に社名が浸透していく。バブル崩壊後の1990年代以降だろうか。

大前氏は早稲田大理工学部出身でマッキンゼー日本支社長を務めたことがありビジネス書を多く出している。勝間氏は慶應義塾大商学部出身でシングルマザーとして働く女性のあり方が注目され、著書はベストセラーになった。

マッキンゼーに入った理由

マッキンゼーに勤務する女性Oさんは、早稲田大政治経済学部出身で(2020年卒)、いくつかの理由からコンサルティング業界を志望するようになった。

しかし、コンサルティング会社ならばどこでもよかった、というわけではなかった。マッキンゼー・アンド・カンパニーについては、大学3年の夏頃、就活サイトで初めて知ることになる。

「当時は『どこかで聞いたことがある会社だな』という認識でしたが、思い切ってエントリーしたところ、選考中に出会った方々が一様に個性的かつフレンドリーで、もっと話したい、一緒に働きたいと思えたのです。また、先輩方が語ってくれたマッキンゼー・アンド・カンパニーの魅力。

たとえば『いわゆる外資系企業の一拠点ではなく、世界中の拠点がワンチームとなって仕事に取り組んでいる』『直属の上司や後輩が海外拠点に異動することも頻繁だし、日常的に海外のエキスパート(特定領域の専門家)と連携をとっている』といったグローバルカンパニーの特徴にも強く惹かれましたね」(早稲田大キャリアセンターウェブサイト)

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2021年、マッキンゼー・アンド・カンパニーのパートナーであるKさんが慶應義塾普通部(中学にあたる)で講演している。彼は同校OBで慶應義塾大法学部の出身だ。

後輩にこう語る。

「自分の人生はこんなもんって思った瞬間に問題を問題とも思わなくなり、挑戦する人生が終わってしまいます。そして、そんな人の人生はしょせんこんなもん程度になってしまいます。これほどもったいないことはありません。

(略)みなさんが今日の授業を受けて、少しでも『なにかに挑戦しよう。一生懸命ってかっこいいんだ、楽しいんだ』って思ってもらえたらとても嬉しいです」(慶應義塾普通部ウェブサイト)

Kさんは大学卒業後、三井物産、ハーバード・ビジネススクールMBA取得を経て、マッキンゼーに入った。絵に描いたようなキラキラした経歴だ。こんな先輩から、マンガ「スラムダンク」の「あきらめたらそこで試合終了ですよ」に似たフレーズを聞かされる。

マッキンゼーという社名が慶應義塾大の附属校の中学生に刷り込まれるのは大きい。まだ10代の少年が「マッキンゼーをめざす」と言い出す時代なのだろう。

小林 哲夫 教育ジャーナリスト

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こばやし てつお / Tetsuo Kobayashi

1960年生まれ。教育、社会運動問題を執筆。1994年から「大学ランキング」の編集者。著書に『神童は大人になってどうなったのか』『早慶MARCH』『ニッポンの大学』など。

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