リーマンショック以降、世界的に金融機関の安全性確保に向けた検査・監督は強化され、特に「G-SIBs」「D-SIBs」と呼ばれる巨大金融機関は金利上昇リスクなどに対しても十分な流動性を確保できるよう規制されている。
しかし反対に、SVBのような中堅以下の銀行は、規制反対のロビー活動が奏功し、トランプ前政権下で規制緩和が進んでいた。そのため、今回のように金利上昇に対して非常に脆弱な資産ポートフォリオが組まれるようなことになっていたのだ。
SVB破綻は「不幸中の幸い」になるのか?
今回の破綻をきっかけに、早速、FRBは中堅以下の銀行に対する銀行規制・監督の強化に乗り出している。アメリカ経済に詳しいみずほリサーチ&テクノロジーズの小野亮プリンシパルは「『今回の金融システム不安が無事収まる』という前提付きで言えることだが、SVB破綻は結果的に不幸中の幸いだったということになるかもしれない」と指摘する。
小野氏によれば、昨今の状況はリーマンショック前の2000年代半ばに似ていた。当時もFRBは利上げを進め、金利上昇で経営が圧迫された住宅ローン専業金融機関はサブプライムローン(信用度の低い借り手向けローン)や、無審査ローン、初期返済額抑制型ローンなどの「新商品」拡販に突っ走った。これらがその後、不良債権の山を築き、リーマンショックへと発展したのは周知のとおりだ。
「利上げに苦しむ中堅以下の銀行は苦肉の策を進めて、何かのもっと大きな危機の種をまく可能性があった。アメリカが規制強化に転じるなら、それらは未然に防がれることになるだろう」(小野氏)
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