「ABEMA」がW杯全試合生中継を実現できた理由 10年先も成長を続けられるエンジニアの条件

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ーー 新機能開発や障害対策などさまざまな取り組みが同時進行する一大プロジェクト。なぜ、『ABEMA』の開発チームはこの状況を乗り越えられたのでしょうか?

西尾:準備に約半年、配信期間も約1カ月あり大変な状況ではありましたが、エンジニアにとっても一生に一度経験できるかどうかの仕事だったので、そもそも熱量高く取り組めたというのはあると思います。

ただ、私が2018年にCTOに就任して以降、それぞれのエンジニアが成すべき「コト」に向かえる組織づくりをしてきたことが、今回の成果につながっている部分はあるかもしれません。

ーー「コト」に向かう組織ですか?

西尾:はい。もともと、『ABEMA』が開局したばかりの頃は、担当するシステムごとにチームが分かれていたんです。

例えば、iOSチーム、Androidチーム、Webチーム、バックエンドチームというふうに、「どのシステムを担当するか」で組織が縦割りになっていました。

ただ、こうした組織体制にすることで、エンジニアの考え方が部分最適になってしまったり、サービスやプロジェクトの全体を見渡せなくなったり、何のためにこの仕事をするのかという本来目を向けるべきものを見失いやすくなっていました。

例えば、バックエンドチームなら、向かうミッションが「バックエンドを落とさないこと」になってしまい、その先にあるユーザー体験にまで思い至らなくなっていた。そこで、チーム編成をがらりと変えたんです。

現在われわれのエンジニア組織は、コンテンツ配信チーム、コンテンツエンジニアリングチーム、ストリーミングチームといったように、「ユーザーにどのような体験を届けるか」をベースにチームを構成しています。

そうすることで、エンジニア各自のミッションが分かりやすくなり、一人一人が自走できるようになっただけでなく、サービスをより良くするために必要な技術を各チームで発展させていけるようになりました。

ーーミッションが明確だと、仕事に対する熱量も高まりやすくなりますよね。

西尾:まさにそうですね。エンジニアが熱量をもって成すべきことに取り組むことが、僕らが目指す「新しい未来のテレビ」の実現につながっていると思います。

(写真:エンジニアtype編集部)

進化し続けるエンジニアと、挫折するエンジニアの差

ーー コトに向かうエンジニアを増やすために、まずはチーム編成など環境面を変えることに取り組んできたということですが、西尾さんがエンジニア育成の面で力を入れているのはどんなポイントですか?

西尾:大前提、僕自身は「技術を使って何かを成したい人」と仕事がしたいと思っています。

「技術は手段だから目的にしちゃいけない」みたいな話ってよくあると思うんですけど、それともまたニュアンスがちょっと違って説明が難しいんですけど……。

僕がイメージしているいいエンジニアというのは、「技術を正しく手段として使うために、技術をちゃんと手に持ってる人」なんです。その上で、どうしても達成したい「何か」を持っているような。

そういう人にはすごい熱量、パワーがありますから。『ABEMA』のエンジニアたちにも「技術を正しく手段として使うために、技術をちゃんと手に持ってる人」を目指してもらいたい。

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