『塔の上のラプンツェル(TANGLED)』--元気になるアメリカ映画とマーケティング《宿輪純一のシネマ経済学》

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 この泥棒とお城に幽閉されたお姫様というパターンは、名作『ルパン三世 カリオストロの城』と似ている気がした。
 
 小生は実は脚本の勉強もしたことがあるが、その経験からいうとアメリカ映画の脚本には特徴があるのである。テーマは“いつも”「主人公の成長」である。そして、どの映画にも、それを阻むライバルがいる。『スター・ウォーズ』だとダース・ベイダーで、『フォレスト・ガンプ』だと途中で亡くなる彼女である。本作ではもちろんマザー・ゴーテルである。それがアメリカ映画の特徴である。
 
 今回の成長する主人公はこのラプンツェル(女性)とフリン(男性)である。この2人が苦労を重ねて一皮むけて成長していくのである。

ディズニー長編アニメは特にこの原則に忠実に沿って、そしてマーケティング戦略としてそういったストーリーの抑揚をさらに強調する。

マーケティングの対象はズバリ「子供」である。子供向けの映画は動員数が稼げると映画界ではいわれている。それは、子供は友達と、しかも親御さんも連れて出掛けるからである。さらに、ポップコーンなども大量に食べてくれる。

本作品の邦題と原題の違いで気がついたかもしれないが、原題は「Tangled」で映画専用である。Tangledの意味は(髪の毛などが)絡まっている状態のことである。ここにディズニーの戦略がある。前作の『プリンセスと魔法のキス』はディズニーの想定ほどには観客動員できなかった。それはプリンセスと女性に焦点を当てた形になっていて、米国では男の子があまり見に来なかったというのである。そこで、今回は男性も女性も関係のない題名にした。いろいろと考えられている。

しかし、ディズニーといえば、今回の東日本大震災で「東京ディズニーランド」も閉園されている。一日も早く再開をして、お子さんを中心に楽しさを与えてほしい。言い忘れたが、アニメの技術は日に日に進歩し、3Dはすばらしく、画面も登場人物も大変きれいである。もちろんストーリーもよくできていて、見てとても楽しいのは言うまでもない。



”TANGLED”(L-R) Rapunzel, Flynn(c)Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.  (c)Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

しゅくわ・じゅんいち
博士(経済学)・映画評論家・エコノミスト・早稲田大学非常勤講師・ボランティア公開講義「宿輪ゼミ」代表。1987年慶應義塾大学経済学部卒、富士銀行入行。シカゴなど海外勤務などを経て、98年UFJ(三和)銀行に移籍。企画部、UFJホールディングス他に勤務。非常勤講師として、東京大学大学院(3年)、(中国)清華大大学院、上智大学、早稲田大学(4年)等で教鞭。財務省・経産省・外務省等研究会委員を歴任。著書は、『ローマの休日とユーロの謎』(東洋経済新報社)、『通貨経済学入門』・『アジア金融システムの経済学』(以上、日本経済新聞出版社)他多数。公式サイト:http://www.shukuwa.jp/、Twitter:JUNICHISHUKUWA、facebook:junichishukuwa ※本稿の内容はすべて筆者個人の見解に基づくもので、所属する組織のものではありません。

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