無印良品、台湾で大躍進を始めた知られざる経緯 大型店が続々、台湾オリジナル商品も本格化

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オリジナル商品の売り上げランキングは1位が豆乳、2位が龍眼やナツメ入りの黒糖(熱湯で溶かして飲むと美容・健康にいいとされる)、3位が金柑の砂糖漬け。中でも圧倒的人気ナンバーワンが豆乳。

リサイクルできてストローも不要という理由でガラス瓶が採用されている(写真:筆者撮影)

無糖と微糖の2種類があり、200ml入りで各35元(日本円でおよそ175円)。

タンパク質の摂取が重視される台湾では日本以上に豆乳が広く親しまれているが、相場よりやや高めの価格設定であるにもかかわらず、子どもに飲ませたい子育て世代を中心にリピーターが多いという。

製造者のリスクを考えた、取引先との丁寧なつき合い

この豆乳で注目すべきなのが、100%台湾産の大豆で作られているという点だ。

台湾は年間258万トンの大豆を輸入しており、そのうち23万〜25万トンが食用だ。だが、国内生産の大豆の生産量は自給率に換算するとわずか2%以下しかない。

稲作自給率が100%を上回っているという現状もあって、台湾政府は現在、稲作より大幅に節水でき、肥料を減らせ、さらに食料自給率を上げることのできる大豆への転作を推進している(出典:進口漲國產大豆拚增產5年內食用占1成保食安| 生活 | 中央社 CNA)。

そんな政府方針に合わせる形で、無印良品はしっかりした豆乳作りをしている製造元を探し、取り扱いを始めた。「高雄選10号」と呼ばれる遺伝子組み換えでない品種を使い、農薬残留0をクリアした、防腐剤無添加の豆乳だ。

台湾の行政院農業委員会(日本の農水省に相当)農糧署から表彰されたというこの取り組みについて、吉田総経理は今後の展開を踏まえてこう語る。

「これまで豆乳を売ったことがない私たちに託すわけで、製造者側も当初は不安だったと思います。もしかしたら売れなくて返品されてしまうかもしれないと心配されたかもしれません。

でも、私たちは返品はしないポリシーです。そのぶんわれわれが在庫リスクを抱えることにはなりますが、そのリスクをこちら側が取らないと、製造元は売価を上げたりして在庫リスクを回避するアクションを取らなければならなくなる。これは小売業にとってはあまりいい循環ではありません」

取引先との丁寧なつき合いの先にはPB(プライベートブランド)での商品化も見据えている。

「豆乳がまさにそうですが、まずはお互いでリスクを取って販売を開始し、安定して売れるようになってきたら、製造者と交渉して無印良品のPB商品として売らせてもらいたいと交渉します。そうすると製造側は在庫リスクや営業努力などの間接的なコストなど、さまざまなものから解放されて、いいものを作ることに専念できるようになるんですよね」

台湾オリジナル商品のラインナップは、こうして地道に積み上げてきたという。

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