無印良品、台湾で大躍進を始めた知られざる経緯 大型店が続々、台湾オリジナル商品も本格化

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台湾における一連の商品企画・開発は初めてのことで、日本でのように豊富な知見やノウハウがあったわけではない。どんな点が困難だったのか、聞けば意外な回答が返ってきた。

「まだ台湾全土で58店舗のため、(自前で)食品を作るにはまだ規模が小さいし、食品販売の認知度もまだまだ低い。売り切れなくて仕方なく店頭で処分しなければならないこともあり、かといって生産ロットを減らして販売価格が高くなってしまうのは避けたい。生産者側に返品するようなことはしたくない。これが重要な課題です」

「日本の国民食がカレーであるなら、台湾は鍋ですね。鍋用のスープは年間通してよく売れています」と吉田総経理(写真:筆者撮影)

「多様性がある中で同じ価値観のもとに皆が自立して働いている組織がいちばん強い」

商品開発や、魅力的な地産地消の食品を扱う「良品市場」を担当するスタッフは、本部でもごく数名だそうだ。

「各地方の店舗が中心となって、その地域でまだ埋もれている魅力的な商品を見つけてくる必要がありますからね。本部のスタッフは少なくていいんです」と吉田総経理は言い切る。

日本と同じく少子高齢化の進む台湾では、一部の超人気企業を除き、多くの企業にとって人材獲得が困難な状況にある。

吉田総経理は、それは無印良品にとっても例外ではないという。

「IT企業や半導体など、給与面で強い競争力を持つ企業が台湾には数多くあります。ただ、われわれのところに来てくれるスタッフは、無印良品の哲学に共感してくれる人が多いというのは、日本や海外でも共通しています。

多様性がある中で同じ価値観のもとにそれぞれが自立して働いている組織って、いちばん強いと思います。それに『良品市場』のような取り組みを続けていると、外部にも価値観で共感できるパートナーがどんどん増えていくんですよ」

旅行で台湾を訪れたら、ぜひ無印良品の売り場を訪れてみてほしい。台北だったらおすすめは「良品市場」シリーズの品ぞろえが多い「MIRAMARフラッグシップ店」だ。今のところ日本では販売されていない台湾限定アイテムが数多く手に入る。日本の小売りメーカーが商売人魂のたくましい台湾でどのように戦っているか、目撃してみてはいかがだろうか。

近藤 弥生子 ノンフィクションライター

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こんどう やえこ / Yaeko Kondo

2011年より台湾・台北在住。オードリー・タンからカルチャー界隈まで、生活者目線で取材し続ける。東京の出版社で雑誌編集を経たのち、駐在員との結婚をきっかけに台湾移住。現地デジタルマーケティング企業で勤務後、独立して日本語・繁体字中国語でのコンテンツ制作を行う草月藤編集有限公司を設立。台湾での妊娠出産、離婚・シングルマザーを経て、台湾人と再婚。著書に『オードリー・タンの思考』『オードリー・タン 母の手記「成長戦争」』『まだ誰も見たことのない「未来」の話をしよう』『台湾はおばちゃんで回ってる⁈』がある。

ブログ:「心跳台灣」

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