2020年に売り上げ水増しなどの不正会計が発覚し、一時は経営破綻の危機に瀕した中国の新興カフェチェーンの瑞幸咖啡(ラッキン・コーヒー)。そんな同社の業績が、目覚ましい回復を見せている。
ラッキンは3月2日、2022年の通期決算を発表した。それによれば、売上高は132億9300万元(約2630億円)と前年比66.9%増加。ストックオプションや不正会計事件に関わる和解費用などを控除したNon-GAAP(非アメリカ会計基準)ベースの純利益は10億4800万元(約207億円)と、1億1000万元(約22億円)の純損失を計上した前年から黒字化を果たした。
注目されるのは、本業の収益力を反映する営業損益がNon-GAAPベースで15億5400万元(約307億円)の黒字に転換したことだ。ラッキンの営業損益が通年で黒字化したのは初めてであり、同社の復活がギミックではないことを示唆している。
業績回復を牽引するのは積極的な出店拡大だ。ラッキンの2022年末時点の店舗数は8214店と、1年間で36.4%増加。スターバックスを抜いて中国最大のカフェチェーンになった。「2023年に1万店突破の目標を達成する自信がある」。同社の董事長兼CEO(会長兼最高経営責任者)を務める郭謹一氏は、決算説明会でそう語った。
投資家との和解交渉も最終段階
ラッキンは2019年5月、創業から2年余りでアメリカのナスダックに上場し、中国企業のIPO(新規株式公開)の最短記録を打ち立てた。ところが、それから1年も経たない2020年4月、経営陣の一部が22億元(約435億円)の売り上げ水増しを含む不正会計に手を染めていたと自ら公表した。
(訳注:不正会計事件の詳細は『中国・新興カフェ「深刻な不正会計」のつまずき』を参照)
同社はナスダックを上場廃止になり、損失を被った投資家から相次いで訴訟を起こされた。アメリカと中国の証券監督当局も同社を調査し、高額の和解金を含む厳しいペナルティを科した。さらに、事件処理の一連の過程で、同社の経営陣はほぼ総入れ替えとなった。
新経営陣は会社の立て直しに奔走し、積極出店と並行して負の遺産の処理を急いだ。2022年3月には「臨時清算手続きが円満に完了した」と発表。翌4月には債務再編のプロセスが完了し、「いかなる国・地域の司法当局からも破産手続きを強制されるリスクはなくなった」と宣言した。海外の投資家との訴訟に関しても、「和解に向けた(交渉の)最終段階にある」と、郭氏は決算説明会で語った。
「ラッキンは不正会計事件による危機を乗り越え、財務内容を好転させた。これはビジネス界の1つの奇跡だ」。かつてラッキン株の空売りを仕掛けたこともある香港のヘッジファンドのスノー・レイク・キャピタルは、2022年11月に公表したレポートでそう評価した。
(財新記者:孫嫣然)
※原文の配信は3月3日
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