「串カツ田中」新人告発騒動に見た3つの重要論点 マニュアルはちゃんと守られてこそ意味がある

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「マニュアルの形骸化」を防ぐためのポイントは、現場のリーダーとどのようなマニュアルが受け入れられるのか徹底して議論をして作り上げること。また、導入に際してはシミュレーションを行うなどして現場に過度な負担が無いのかを検証するという丁寧な工程も必要になる。

マニュアルとは「現場を縛るものではなく、現場を守るためにこそある」のだという意味を伝え、理解と消化されなければ受け入れられないだろう。現場は負荷が増えるマニュアルを敬遠しがちであるし、策定する側はどうしても導入を急ぎがちになることに注意をしなければならない。

2 「このくらいは黙認される」と勝手に現場が解釈をしているケース

マニュアルは存在しながら現場の運用で勝手に解釈をされており機能していない、いわば面従腹背というケースは最も危ういケースだ。このケースが難しいのは、現場の責任者は問われればマニュアルを守っていると回答をするからだ。つまり面従腹背を防ぐためには、マニュアルが実際には現場で守られていないという事実を企業は把握する必要がある。

信頼関係がなければ問題提起する社員は出てこない

今回の「串カツ田中」の件ではまさにここが課題だった。現場で実際にはマニュアルが守られていないことを吸い上げて把握し、対応できるような組織としての仕組みやネットワーク、そして最後は組織と人の間で信頼関係が築けているのかがポイントとなる。信頼関係がなければ勇気を持ち問題を提起しようとする社員は出てこない。今回のケースで当該社員は全社員に訴えることを試み、それが外部に漏れたことからも、結果としてこの点が欠けていたと言わざるをえないだろう。

これに対して「串カツ田中」を運営する串カツ田中ホールディングスの広報は「食品衛生法より厳格な安全基準を社内に設けて運用しております」と説明している。高い基準のマニュアルであり法令違反ではなかったが、「社内ルールの再検討および衛生管理に対する社内教育も順次実施してまいります」としており、社内ルールが形骸化していたことを認める形となった。

3 これから真価が問われる企業の広報力

まず近年多発しているSNS拡散による炎上騒ぎは、まさにスピード勝負である。企業として発表をする前に、関係者から速やかに聞き取りをして事実関係を把握する。これだけでも今回のように本社のみならず、全国で現場店舗を複数抱える企業は大変だ。さらにその調査結果を踏まえて経営側、関連部署、顧問弁護士などでどう説明や謝罪をするのかを早急に判断しなければならない。

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