ロシアが「むきだしの力」で行動するしかないワケ 状況は「第1次世界大戦」当時と酷似している

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「ロシア・ウクライナ戦争」を、地政学的理解から考える(写真:butenkow/PIXTA)
当初、世界中の軍事関係者に、2週間ほどでロシアが勝利して終わるとも見られていた「ロシア・ウクライナ戦争」は、今なお続いている。今やこの戦争がこれから短期に終結すると考えている識者はもういない。
注目すべきは、「世界最初の大戦争」であり、軍人以外の死傷者も大勢出した「第1次世界大戦」と酷似しているという点だ──ビジネスパーソン向けに「地政学」の教鞭を執る田村耕太郎氏はそう語ります。
同氏の新刊『地政学が最強の教養である “圧倒的教養”が身につく、たった1つの学問』から一部抜粋、編集してお届けします。

背景にはプーチンの「焦り」がある

地政学とは「その国の元首になる“ロールプレイングゲーム”」である。持続する現実的な平和を確立するためには地政学的理解が欠かせないのだ。

世界はジャングルの掟が支配する。フランシスフクヤマ氏が『歴史の終わり』で説いたような世界はやってこなかった。世界に自由民主主義が自然と広がり、国際機関や国際社会が国際法を使って平和を保障してくれるような世界はまだまだやってこないだろう。

現実的には平和とは力の均衡状態のことを言う。今回のウクライナ戦争は、プーチン氏がウクライナにおけるNATOとロシアの均衡状態が崩れたと判断して起こした。むき出しの力を使って状況を変えようとするリーダーの置かれた立場を理解して手を打たなければ、現実的で持続する平和はやってこない。

そのために地政学的理解、つまりロールプレイング的思考訓練が必要なのだ。善悪でリーダーを判断して勧善懲悪を期待してはいけない。そこも理解してわれわれ日本人は世論やビジネスの構築を目指すべきだろう。

ウクライナ戦争に勝るとも劣らないような地政学的リスクが、われわれが住む日本近辺にもないわけではないのである。

次ページなぜロシアはあんなに広大なのにまだ他国を攻めるのか?
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