脱炭素に貢献する次世代のエネルギーとして注目を集める「核融合発電」。核融合反応を発電に利用すれば、発電過程で二酸化炭素を排出せず、投入電力からそれを上回る電力を取り出すことが可能だと期待される。
2020年代に入って、アメリカの国立研究所が世界で初めて核融合によるエネルギーの純増を確認した。それを機に世界中で核融合関連のスタートアップが立ち上がり、巨額の資金調達に成功。国内でも2024年3月に、内閣府主導で核融合産業協議会が発足するなど、動きが活発化している。
そもそも核融合発電とはなにか、実現に向けた課題はなにか。国内にあるどんな技術が貢献できるのか。核融合発電の「いま」を解説する。
プラズマを加熱する重要部品「ジャイロトロン」
スタートアップを中心に資金を集め、世界的に研究開発が加速する核融合。キヤノン子会社のキヤノン電子管デバイス(旧:東芝電子管デバイス)は磁場閉じ込め型と呼ばれる方式の核融合炉で使用される主要部品を製造している。
キヤノン電子管デバイスが製造しているのは、炉の加熱装置にあたる「ジャイロトロン」。マイクロ波と呼ばれる高周波の電磁波を発生させる装置だ。
核融合反応を起こすにあたっては、重水素と三重水素から成る燃料を炉の中で加熱しプラズマ状態にすることが必要だ。その際に、プラズマを超高温に加熱する役割を果たすのがジャイロトロンだ。ジャイロトロンで発生させたマイクロ波を核融合炉まで送り加熱する。仕組みとしては、「マグネトロン」と呼ばれる部品からマイクロ波を放出して対象を加熱する電子レンジに近い。
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