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ロシアが「むきだしの力」で行動するしかないワケ 状況は「第1次世界大戦」当時と酷似している

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  • 田村 耕太郎 国立シンガポール大学リー・クワンユー公共政策大学院兼任教授、2022~2026年一橋大学ビジネススクール客員教授
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ケナンは1997年、当時のクリントン政権が進めようとしていたNATO拡大の動きについて「冷戦終結後のアメリカの政策の中で最も致命的な誤り」との厳しい批判を、アメリカのニューヨーク・タイムズ紙へ寄稿した。「NATO東方拡大によって『ナショナリスティックで反西側的で軍国主義的』な見方がロシア国内で沸き上がる」との深刻な懸念を表明した。

翌1998年、同紙の著名な外交問題コラムニスト、トーマス・フリードマン記者のインタビューに答え、「NATO東方拡大は新たな冷戦の幕開けとなるだろう。ロシア人は次第に敵対的な反応になり、それは彼らの政策に影響するだろう。悲劇的な間違いだ」と警告した。

ウクライナ戦争は、プーチン氏の名誉と恐怖にかられた愚行というだけではなく、欧州の微妙な均衡のバランスを読み間違えたクリントン氏の戦略ミスによる、起こるべくして起きた侵攻だと言えるのかもしれない。

NATOを結束させ拡大させたプーチンの自滅

致命的な読み違えはプーチン・サイドにもある。NATOの結束の弱さをついてウクライナに電撃的に侵攻し、ロシア帝国の復活を狙ったプーチン氏。皮肉にもプーチン氏の行動は今一つ結束が弱かったNATOを強力に結束させた。NATOはウクライナ戦争を自分事として結束し、連携を深めている。当初2週間で敗れるといわれたウクライナの善戦やロシア軍の予想外の弱さもNATO結束の起爆剤になっている。

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東方拡大を嫌気して行動を起こしたプーチン氏にとってさらなる皮肉となったのは、ウクライナ戦争の結果、NATOがさらに東方拡大する可能性が高まったことだ。プーチン氏の行動は、今までNATOに加盟せず、ロシアに余計なプレッシャーをかけまいとしていた国々を、ロシアへの懸念から次々とNATOへ加盟させていくことになりそうだ。

フィンランドとスウェーデンがNATOに加盟申請した。唯一のハードルであったトルコは、当初この2カ国の加盟申請に難色を示していたが、今は加盟を認める方向に変化してきた。これでNATOがさらに東方拡大する可能性が高まった。

それでは、ロシアがウクライナ戦争で核兵器を使用する可能性はあるか?

私の答えはノーだ。使用する意義が見いだせない。どんな使い方をしても戦略的成果があるとは思えないからだ。

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