ロシアが「むきだしの力」で行動するしかないワケ 状況は「第1次世界大戦」当時と酷似している

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「なぜロシアは大きな国土があるのに、他国を攻めるのか?」という疑問について考えてみよう。あなたもプーチンになってみる。あなたが、クレムリンの執務室にどっかりと座っていたらどういう世界が見えるだろうか?

ロシアの「地理」「気候」「国土」「周辺国」

ロシアは世界一の国土の広さで、その面積は約1710万㎢、日本の約45倍である。東西に大きくまたがるため11ものタイムゾーンがあり、同じ国内でも時差は最大10時間にわたる。そんな広大な国土を治める立場にいるのだ。その広大な国土に190を超える少数民族を抱えているのだ。

あなたは大豪邸に住んでいる。その中には自分たちとは慣習や言葉も違う人たちが多く住んでいる。それよりある意味異質な人たちと、その広大な豪邸の敷地の境を接しながら窓やドアは増えているのだ。家が大きければ大きいほど、増えた窓やドアから強盗や泥棒に侵入される可能性は高くなる。プーチン氏は、陸続きの国境線が伸びれば伸びるほど侵入される恐怖は増すのだ。

地理が決まれば気候も決まる。ロシアの国土の約60%は永久凍土である。そしてその国土の80%は無人であるといわれる。国土が広く見えて、「なぜあんな広い国に住みながらまだ領土を拡大しようとするのか」と思う人もいるだろうが、80%が無人で住めない場所だとしたらどうだろう。

そして、地理が決まれば、必然的に「周辺国」が決まる。実は、ロシアは国境を隣接する国が14もある。ただでさえ、家が広くて侵入者に「恐怖」を感じているのに、侵入可能な窓やドアが増えたら、あなたならどう思うだろうか。「恐怖」はさらに強まり、もうこうなると、「攻められる前に、こちらから攻める」というマインドになりかねない。

ロシアという国は永久凍土など、居住や移動に適さない土地が多い。そのせいもあり、農業の生産性は低い。ロシアの耕地面積は1億2200万ヘクタールで、日本の28倍もあるが、穀物の単位面積当たり収穫高は1ヘクタール当たり2.4トンで日本の4割ほどしかない。そして、交易や海洋進出のために活用したい港湾の多くが、冬場に凍結してしまう。

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