“マスク外し"を喜ぶ人が知らないコロナ出費増 PCR検査などの自己負担が増える可能性

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

補助がなくなれば、病院の負担が大きくなり、コロナ患者の受け入れを躊躇する医療機関が出てくる可能性もある。

多くの民間病院が加盟する日本医療法人協会の加納繁照会長は、「感染者の動線と分離させ、医療従事者の感染予防もするなどのコストを考えると、受け入れる医療機関が大きく増えるとは考えられない。そのため高齢者など重症化リスクの高い患者の死亡数の増加も覚悟しなければならない」と言う。

新型コロナの致死率は季節性インフルエンザ並みになったものの、直近の感染拡大期では、行動制限がなかったことなどから感染者数自体が増え、基礎疾患を持つ高齢者などでの死者数が増加。今年の年明けにかけての「第8波」では、1日あたりの死者が過去最高となる500人を超えた日もあった。

一方、コロナ患者を受け入れてきた伯鳳会の古城資久理事長は、「未知の感染症だった3年前とは違い、ノウハウは蓄積できた。動線を分ければ、一般病床でもコロナ患者の受け入れは十分に対応可能だ」と話す。

ある病院関係者は5類化への移行について、「一定程度の死者が出ることは(経済活動のために)しょうがない、という考えが社会のコンセンサスになったということではないか」と見る。

医療体制に差が生まれる可能性も

しかし、新型コロナの感染症法上の位置づけが変わったとしても、高齢者や基礎疾患のある人を感染リスクから守る措置は必要だ。

前述の東京都の補正予算では、今後政府の方針が継続することを念頭に、医療機関への病床確保料として予算案の約3割にあたる約510億円を計上しているほか、感染患者や濃厚接触者に対するPCR検査や医療費の患者の自己負担分についても、当面公費負担が続くことを想定した予算配分になっている。

東京都はこれまで独自に運営してきた高齢者用の臨時医療施設について、5類化後も維持したいと考え、約293億円を予算としてあてている。東京都感染症対策部の担当者は、5類化後も引き続き高齢者などの高リスク患者を守ることや、医療現場での混乱を避けるための措置が必要であるとしている。

医療機関での医療費の自己負担や病床確保料については、政府の方針によって全国一律に見直されていく。しかし、これまで自治体独自で行われてきた施策の判断については、各自治体の方針にゆだねられるため地域間での医療体制に差が生まれるという懸念もある。

兵頭 輝夏 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ひょうどう きか / Kika Hyodo

愛媛県出身。東京外国語大学で中東地域を専攻。2019年東洋経済新報社入社、飲料・食品業界を取材し「ストロング系チューハイの是非」「ビジネスと人権」などの特集を担当。現在は製薬、医療業界を取材中。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事