“マスク外し"を喜ぶ人が知らないコロナ出費増 PCR検査などの自己負担が増える可能性

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これまで公費負担があったPCR検査の費用は、判断料を含め1万5000円以上がかかる。重症化リスクの高い人に投与され、自己負担のなかったコロナ治療薬「ラゲブリオ」は、処方期間である5日間分で約9万4000円だ。

また、全額公費で行われてきたコロナのワクチン接種は財務省の推計によると、接種支援策などを含め1回あたり約9600円とされている。これらの公費負担が、5類化に伴い見直される可能性がある。

そもそも感染症法とは、感染症の発生や蔓延を防ぐことを目的に、感染症の危険性ごとに異なる対応を定めたものだ。新型コロナは当初、感染リスクの高い結核などと同等の「2類」に位置づけられていたが、より細かな措置が必要だとして「新型インフルエンザ等感染症」という新たな分類に振り分けられた。

これに基づいて政府や自治体は、新型コロナの感染者に対する就業制限や、入院勧告を行うことができた。また、検査や入院、ワクチン接種にかかる医療費も、法律に基づき全額公費負担で行われてきた。患者を診察・入院させることができる医療機関は、適切な対策がとれる指定医療機関のみに制限されていた。

一方「5類」は、季節性インフルエンザや、水ぼうそうなどと同等のカテゴリーだ。感染した場合の就業制限や入院勧告はない。コロナが5類に位置づけられることによって、経済活動を続けるうえでの支障がなくなるというメリットがある。

コロナ患者を診療する医療機関は増えるのか

また、これまでコロナ患者を受け入れてきた医療機関への公費負担についても、移行期間を経た後に見直される方向だ。医療機関の収入に最も大きな影響を与えるのが、コロナ患者の病床への補助費だ。政府はコロナ患者の受け入れを促すことを目的に、コロナ患者のために確保された病床が空床の場合、その損失を補償する病床確保料を支給している。

感染初期には、感染患者を受け入れる病院でコロナ患者専用の病床を設けた結果、一般患者を受け入れる人的余裕や病床数が減り、結果的に収入が落ち込むといったケースが相次いだ。病床確保料はこうした事態に対応し、コロナの診療体制を整える大きな役割を担った。

コロナ患者を診察した医療機関に対し、通常よりも診療報酬が加算されるという特例措置もとられていた。クラスター対策などの費用が重くのしかかる病院にとって、これらの支援がコロナ患者を診療するインセンティブになっていた。

5類に移行することで、指定医療機関以外の医療機関もコロナ患者を診察することができ、コロナ患者を受け入れる病院が増えるのではないかと期待する声もある。しかし、現時点で、5類化によって医療機関がコロナ対策をどれだけ軽減できるかなどの指針は出ていない。感染力の高い現状では医療機関が、従来と同等の対策コストをかけることが予想される。

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