話はこれで終わらない。前述したネットワークオーディオプレーヤーDSシリーズ、およびプレーヤー機能内蔵プリアンプ/プリメインアンプのDSMシリーズをアップデートし、「スペース・オプティマイゼーション機能」を追加したのである。
これは、Exaktにもともと含まれていた機能で、部屋の形状、大きさ、天井高、壁/天井の素材や窓の有無や大きさといった情報を入力することで音響特性を推測し、定在波と呼ばれる現象によって発生するピーク音を抑制する。
この効果は絶大なのだが、Exaktではスピーカーに内蔵するデジタル補正用DSPを用いている処理をDS、DSMシリーズにも移植。各製品をアップデートすることで、スペース・オプティマイゼーションを従来製品のユーザーにも無償で解放した。
アップルのiOS戦略とも似た手法
実は筆者、Klimax DSMのオーナーであるため、実際にこの機能を試させてもらったが、確かに大きな改善がある。いや、今回だけではなく、過去にもさまざまなカタチで最新製品に持つ要素を取り込んでくれてきた。
ハードウェアの更新が必要な部分までは変えられないのだが、ソフトウェアで改善できる部分に関しては可能な限り対処することで、長期的な顧客満足を維持しようとしている。このあたりはアップルのiOS戦略とも似た手法で興味深い。
むろん、積極的に新しい時代に対応しようとしてきたがゆえに、LINNの中だけで閉じた技術になっていた部分もある。ギラード社長はそうした閉鎖性を可能な限り排除しながら、”データ配信”で音楽が流通するこれからのオーディオ環境の中での最適解をと信じる手法を体験できる幅を拡げていくという。
音源そのものがアナログからデジタル、そしてデジタルからデータへと変化すれば、オーディオシステムのカタチは変化する。振り返ってみれば当たり前のことだ。しかし、実際に伝統的な手法での強みを身に着けていると、なかなか「今いる場所」から動けるものではない。
将来を読み間違えていたならば、LINNが今ほどに注目されるブランドにはなっていなかったかもしれない。いや、DS発売前年の経営危機を考えれば、独自性を打ち出せないメーカーとして歴史の彼方に消えていく運命だったかもしれない。
小さなメーカーが、世の中の大きなトレンドを変えていくことはできない。トレンドに追従するだけでは企業として存続できても、ブランドとしての存在感は示せない。しかし、LINNは目の前の大きなトレンドを読み、それに対して対処療法ではなく、自分たちの存在価値は何かを自問し、答えを得たからこそ今のプレゼンスを得ることができたといえるだろう。
日本の多くのメーカーは既存事業の衰退に苦しんでいるケースが多い。しかし、自らの足元の強みをもう一度、見つめ直してほしい。たとえジャンルが異なっていたとしても、彼らの発想の転換は参考になるのではないだろうか。
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