最高240万円!LINNの音は何が違うのか
高級オーディオメーカーの超サバイバル術

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これまで、音源がデジタルであっても、どこか早い段階で高品位にアナログ信号に変換し、従来からのノウハウが多く存在し、既存オーディオファンが自宅に所有しているオーディオ機器を通じて楽しむのが主流であった。

しかしLINNは、スピーカーシステムまでデジタル領域を拡大することで、これまでのオーディオシステムが解決できなかった問題に取り組んだのだ。これはDSをいち早く世の中に送り込んだがゆえの、発想の転換というものだろう。

LINNの最上位モデルKlimaxシリーズは、機能ごとに分離された区画を持つアルミを削り出し筐体が採用されている

音源がデジタルなのだから、この鮮度を落とさないようにスピーカーユニットにまで届ける。スピーカーユニットは通常、再生帯域ごとに適したスピーカーユニットを用いるマルチウェイ方式が採用される。LINN製品の場合は最大5帯域だが、各ユニットごとに適した帯域に分割するチャンネルディバイダというパートまで、一貫してデジタル処理を行うのだ。

最後は1スピーカーユニットごとに最適化した(帯域制限を行った)デジタル信号をアナログ変換し、個々に用意されているパワーアンプで駆動する。こうすることでアナログの帯域制限フィルターを用いる必要がなくなり、アナログ回路では回避できなかったマルチウェイスピーカーの群遅延問題を解決できる。

細かな補正もデジタルで実行

さらには、各スピーカーユニットごとに特性の細かな違いを計測。その特性を補正するフィルター処理も、デジタルの領域で行う。組み合わせるパワーアンプの特性まで把握できているため、この補正は実に正確で効果的だ。決して小さくないバラツキを持つスピーカーユニットの違いを見事に吸収する。

スピーカーユニットにはシリアル番号が電子的に割り振られており、その番号ごとに個々の特性データをインターネットから参照するデータベースに補完しているという。このため、修理でスピーカーユニットを交換したとしても、インターネットから対応する特性データがダウンロードされ、交換前と同じ特性となることが担保される。

音源の流通が変わる中で、ひたすらアナログ的な品位、鮮度を高める従来の発想は捨てた。デジタル音源ならではの良さを引き出し、最後の最後、スピーカーユニットが空気を振るわせる直前までデジタルでやり尽くそうという発想に切り替えたのだ。

ギラード社長はこのシステムにExakt(イグザクト。Exactのもじり)という名前を付けた。筆者は何度も仕事で比較試聴したが、その長所は簡単に表現できるものではない。嗜好性の高い製品には”好み”が存在するものだ。しかし、”好み”の問題をさておくのであれば、オーディオに気軽さをもたらす革新だとお伝えしたい。

正しくExaktを設定し、ポンとあって欲しい場所にスピーカーを設置すれば、まるで長年、追い込んできたセッティングのように、朗々と歪み感のないクリアな音場が拡がる。これだけの純度の高い音を、ここまで簡単に実現するシステムは他にない。

ここまでの話は、何もニュースというわけではない。しかし、アナログ的なオーディオ品位の価値が重く、また一気通貫でLINN製品に揃えなければならない仕組みということもあり、なかなかハイエンドオーディオの世界でも、LINN製品のファン以外にはその本質に触れることができなかった部分でもある。

今回、LINNが新たに取り組んだのは、他社製品も含めた、アナログオーディオシステムの問題を、LINN製品で解決する機能を提供し始めたことだ。他社製の著名なスピーカーが持つ特性をLINNが分析し、Exaktに近いシステムでマルチアンプ駆動できる製品を提供したのだ。今日、対応モデルは約30種類程度だが、夏の終わりには約100種類にまで拡大するという(ただしスピーカーユニットごとの補正は当然ながら行えない)。

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