鳥インフルで卵価格2倍に、調達難で外食が悲鳴 過去最大の感染規模、供給正常化に最短半年か
外食業界が卵不足に悩む背景には、全国の養鶏家が鳥インフルで深刻な被害を受けているだけでなく、1月に農林水産省が養鶏団体に向けて出した要請もある。
卵の流通経路は、小売業者向け、外食業者向け、加工業者向けの大きく三つに分けられ、平時におけるそれぞれの流通量は全体の5割、3割、2割という比率になっている。農水省は、消費者への供給不安につながらないよう、小売業者への提供を優先するよう求めたのだ。
供給が優先されている食品スーパーなどの小売店でも、卵の価格は高騰している。農水省の調査によると、2022年2月時点で卵1パック10個入りは平均214円だったが、今年2月には262円にまで上がった。
ただ、卵以外の食品も値上がりしていることや、生活必需品という特性も大きく、「食卓向け消費としては、これまでの価格上昇にもかかわらず、購入量の大きな減少にはつながっていない」(日本養鶏協会の担当者)。
こうした事情もあり、いわば「二の次」となっている外食企業は、生産者から十分な量を確保できなくなっている。
雛が生まれて卵を産むまでに半年かかる
今後の焦点は卵の供給がいつ頃回復するかだが、少なくとも半年はかかるとの見方が主流となっている。通常、養鶏場で感染が確認された場合、その養鶏場で飼育している鶏をすべて殺処分したあと、消毒作業など防疫措置を行うが、営業再開できるまで順調にいっても2カ月はかかる。そのうえ、防疫措置が完了後、すぐさま通常の生産を再開できるわけではない。
採卵鶏は、雛の生産業者や育成業者を経て鶏舎に導入されるが、雛が生まれてから安定的に卵を生むようになるまで、通常半年ほどかかるうえ、雛業者らも採卵鶏の平時の需要に合わせた雛鳥しか生産しておらず、迅速な対応は難しい。
また、ある養鶏産業の関係者は「仮に大規模な農場で100万羽が殺処分になっても、防疫措置の完了後、すぐに100万羽の採卵鶏を仕入れるわけではない」と話す。年間を通して安定的な生産を行うため、いくつかの「ロット」にわけて段階的に導入していくのが基本だという。こうした養鶏産業の構造からしても、鶏卵の需給ひっ迫は当面緩和されそうにない。
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