「子どもの自己肯定感」成長を邪魔する大人の心理 「大人の怯え」が子どもから失敗の機会を奪う

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西岡:受験合格は、知識やテクニックではない部分のほうが大きいと感じています。もちろん多くの知識が必要ですが、合格するのは、自分の意思で行動できているような、しっかりした子です。

やはり、学ぶモチベーション、目指すモチベーションが重要だと感じますね。だからこそ、学校現場でも、モチベーションを保てる環境作りにフォーカスしたほうがいいとも考えています。

金間:非常によくわかります。その傾向は、年々強くなっている気がします。

金間 大介 (かなま だいすけ)/金沢大学融合研究域融合科学系教授、東京大学未来ビジョン研究センター客員教授。北海道生まれ。横浜国立大学大学院工学研究科物理情報工学専攻(博士)、バージニア工科大学大学院、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、文部科学省科学技術・学術政策研究所、北海道情報大学准教授、 東京農業大学准教授、金沢大学人間社会研究域経済学経営学系准教授、2021年より現職。主な研究分野はイノベーション論、技術経営論、マーケティング論、産学連携等(撮影:尾形文繁)

僕ぐらいの世代は、受験向きのガリ勉が、いい大学に進学していましたし、学歴社会を批判する文脈で「お勉強できるからといって、仕事ができるわけではない」という言葉が使われてもいます。でも、今の20代の若者に対しては、こんなことは絶対に言いません。

認識が大きく変わって、学歴も総合力のうちと見なされているからです。偏差値の高い学校の学生は、打てば響きますし、探求心もありますが、その反対の学校もあります。それが本人たちにも見えているわけです。

西岡:多くの学生が、「偏差値の高い学校に行ったほうがいい」と感じていますね。「どこで学びたいか」より「偏差値帯に合っているからここに行こう」となっています。

金間:「いい子症候群」が増えた理由に、自己肯定感の低さが思い当たりますが、では、なぜ自己肯定感が低いのか。西岡さんはどう考えますか?

西岡:僕は、少子高齢化の影響を感じています。進路を選択するにしても、子どもが「東大を目指す」と言い、親がOKすればよいのではなく、親戚たちが何を言うかが気になる時代です。

祖父母が「そんな都会に行くなんて」と言うかもしれませんし、学歴のある親戚が何か言い出すこともあります。つまり、子ども1人の選択において、口を出す大人が多いわけです。

金間:面白い見方ですね。

西岡:学校現場も、先生が「親御さんにどう説明すればいいのか」という感覚で接しています。そうなると、子どもが行動する前に「それは失敗するからやめておこう」と言う確率が高くなる。だから、行動を始めない、「いい子」が量産されるのではないでしょうか。

大人はなぜ子どもから「失敗」を奪うのか

金間:しかし、大人は、なぜそうするのでしょう。失敗させたら、自分の責任になるから? 大人も、経験させたほうがいいということはわかっていると思うんですよ。

西岡:親がすごく不安になっている時代だと聞きます。

親は、自分の子どもを叱った時に、「今の叱り方は正しかったのか?」と不安になります。昔は、兄弟姉妹がいて、子育ての経験を積んでいましたが、今は1人っ子が多く、比較もなく、自信が持てないままになるというのです。それで向き合えないのではないでしょうか。

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