実際、この1年間で燃やされ、略奪され、破壊された美術館や博物館は多く「1000以上の文化施設が被害を受けた」と、オレクサンドル・トカチェンコ文化情報相は昨年12月末にフランスのニュース専門テレビ、BFMTVに語った。
首都キーウ北西に位置するイヴァンキフ市の郷土史博物館はロシア軍によって破壊された博物館の1つだが、被害の中で、ウクライナの民俗芸術家マリア・プリマチェンコによる25枚の絵画が破壊され、灰となった。彼女はウクライナ素朴派の代表格の画家で、巨匠ピカソは当時、彼女を称賛していた。
自らも署名したハーグ条約に違反しているロシア
アメリカの国際博物館会議委員会によれば、ロシア軍は意図的に美術館や記念碑(世界遺産以外)を爆撃し、焼き払っていると指摘している。目的は重要な歴史遺産を破壊することで、ウクライナ人の誇りとアイデンティティーを人々から奪い取り、降伏を迫るためだ。マリア・プリマチェンコの作品が焼失したイヴァンキフ博物館のあるヴィーシュホロド歴史文化保護区の所長は「取り返しのつかない損失」と失望をあらわにしている。
フランス人文化財保護活動家は「ウクライナに残る歴史的文化遺産の保護は、ロシアが勝手に歴史を捏造することを阻止する意味もある」と言う。欧州の指導者がロシアの今回の行為は「歴史を書き換えようとする試み」と指摘している意味は、まさにその国が構築した誇るべき文脈を書き換えようとする行為ということだ。
ロシアは自国も署名した武力紛争時に歴史文化遺産の破壊を禁じた1954年のハーグ条約に自ら違反している。歴史的に独裁者は歴史を書き換えるのに余念がない。
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