子ども発達支援の企業が給付費「不正受給」の疑い 書類偽造で無資格職員配置か、パワハラ疑惑も

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そもそもなぜ、Aさんは証明書の偽造に加担してしまったのか。Aさんによると、偽造を指示したのは総合療育センターつくばの取締役(当時)である鈴木貴之氏だという。鈴木氏は、過去にはこどもプラスHDの取締役も務めていたことがある。

「偽造書類を書くことは犯罪であることはわかっていました。それでも鈴木氏から『俺が書いたら筆跡でバレるだろう』『退職させるぞ』などと脅され、抵抗できませんでした。そのほかにも、鈴木氏からは日常的に叩かれる、蹴られるなどのパワハラ行為を受けていて、断ると次に何をされるのかわからず、恐ろしかった。感覚がマヒしてしまっていたのだと思います」

ただ、実務経験証明書は、Aさん1人で偽造できるものではない。茨城県に提出された証明書には、何者かによって、その事業所を運営するX社の会社名と会社印が押印されていた。Bさんと同じくAさんもX社に勤務したことはなく、証明書にX社の印鑑を押すことは不可能に近い。

偽造書類の存在明らかになった直後に取締役退任

複数の関係者によると、X社の社長と、証明書の作成を指示したとみられる鈴木氏とは古くからの知人だという。証明書についてX社に質問したところ、代表は「Bさんが勤務していた事実はない」と認めた。鈴木氏とは面識があるものの、会社名や会社印が使われた経緯については、「調査中で回答はできない」と回答するのみだった。

Bさんが2022年9月に問い合わせたことにより、県と市は偽造された実務経験証明書について把握している。しかし、いまだ行政処分は下されていない。偽造された書類について、東洋経済はつくば市と茨城県に質問したが、いずれも「個別のことには回答できない」と回答した。

Bさんの実務経験証明書の偽造をどう考えているのか。総合療育センターつくばは「鈴木氏が実務経験証明書の作成を指示した事実はない」と答えた。こどもプラスHDにも取材を申し込んだが、回答は得られていない。

ただ、鈴木氏は2022年10月に総合療育センターつくばの取締役を辞任。代表取締役だった柳澤弘樹氏(現・こどもプラスHD代表取締役)も同時に辞任している。これは、Bさんが県や市に問い合わせたことにより、偽造書類の存在が明るみになった直後のことだ。

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