子ども発達支援の企業が給付費「不正受給」の疑い 書類偽造で無資格職員配置か、パワハラ疑惑も
実務経験証明書は、特定の業種で働いた年数や日数を証明するもの。児童福祉関係の資格では、児童指導員などの資格を得る際に必要となる。総合療育センターつくばが県に提出した勤務シフト表によると、Bさんは2019年4月から児童指導員として勤務していたことになっていた。
児童指導員になるには最低でも2年間の実務経験が必要だ。しかし、2017年11月から総合療育センターつくばでの勤務を開始したBさんは、2019年4月の時点で実務経験の要件を満たしておらず、本来なら児童指導員の資格は得られない。「私が実務経験2年の要件を満たしたのは2019年11月です。それが、この偽造された証明書によって実務経験が水増しされ、児童指導員になったのが7カ月早まっていました」(同)
東洋経済がつくば市に情報公開請求を行ったところ、2019年度に同市が総合療育センターつくばに支給した給付費は3270万円と判明した。Bさんが無資格で勤務していた7カ月間は人員配置基準を満たしていない営業日があり、不正に給付費を受給した疑いがある。
厚生労働省によると「給付費の不正な受給が判明した場合、自治体は事業者へ給付費の返還を求める。同時に、不正の程度によって指定取り消しや業務停止などの行政処分を行う」。事業所が定められた人員配置基準を満たしていない場合は、「人員基準を満たしていない期間が2カ月までなら給付費の3割、3カ月以上からは5割まで減額される」(障害福祉課担当者)。
有資格者の配置が義務付けに
実務経験の期間が水増しされ、Bさんが無資格の児童指導員として配置された背景には、放課後デイに関する制度の改正がある。
放課後デイの事業所数急増に伴い、テレビを見せるだけなどサービスの質に問題のある事業所が指摘されるようになった。このため、国は事業所の質の確保を目的に2019年4月に放課後デイの人員配置基準を改めた。新たな基準では、事業所の責任者となる児童発達支援管理責任者1名と、児童指導員や保育士など2名以上の有資格者スタッフの配置が求められるようになった。
放課後デイは、人員配置基準を満たすことによって都道府県から「障害児通所支援事業所」の指定を受け、「障害児通所給付費」を受ける。制度改正後の人員配置基準を満たさない事業所は、国や地方自治体から給付費を減額されている。
利用者の負担はサービス料の約1割で、放課後デイの経営は自治体から支払われる給付費を中心に成り立っている。Bさんは「人員配置基準の変更によって2019年4月からは児童指導員がいないと給付費が減るので、実務経験証明書を偽造したのだと思う」と話す。