寿司テロなどの迷惑行為めぐる騒動に欠けた視点 加害者への怒りと原因の推察ばかりでは非生産的

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実際、平気で盗撮するなど動画撮影のリテラシーがない大人も多いですし、「拡散されることへの警戒心が薄い」という点で学生以下の社会人も少なくありません。また、親がSNSを使っている姿を見てきた子どもは警戒心が薄い傾向があり、特に自分の画像や動画をアップされていた子どもは「許可を得ずにアップしていい」という認識を持ちやすいもの。自身の行動を見直すだけでなく、「子どもに影響を与える」という意味でも、親が再教育を受けられる場が必要でしょう。

「教育」というと大げさなものに感じるかもしれませんが、現実的に求められるのはコミュニケーションの機会を増やすこと。家族、友人・知人、同僚、上司と部下などの関係性や年齢層を問わず、「やっていいことと、よくないこと」「迷惑行為の境界線」「SNSをどう使っていくか」などについて会話を交わすことでモラルやリテラシーを育んでいく。あるいは、迷惑行為の抑止効果を得ていく。

授業のように誰かから一方的に教えられるよりも、具体的なケースを挙げ、頭で考えながら会話を交わしていくほうが、自分だけでなく他者感情に気づきやすくなり、迷惑行為に至るリスクを減らせるでしょう。

2019年に多発した“バイトテロ”が減ったのは、危機感を覚えた企業側の「コミュニケーションを中心とした従業員の再教育による成果」と言われています。これは「教えることやコミュニケーションの機会を増やすことが、迷惑行為やネット拡散を予防する」という貴重な成功例ではないでしょうか。

迷惑行為をめぐる状況は複雑化へ

迷惑行為で批判を受けた人が、登校や出勤ができない状態に追い込まれた。自分だけでなく家族の名前がさらされ、職を失い、イジメを受けている。友人が離れて孤独になり、就職や転職もうまくいかない。

あるいは、刑法の威力業務妨害または偽計業務妨害罪に問われて懲役や罰金を課せられる。さらに、民事の損害賠償請求もされ、想像を超える高額だった。事実、被害を受けた企業側が「警察に被害届を提出し、刑事・民事の両面で厳正に対処する」ことが当然のようになっています。

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