寿司テロなどの迷惑行為めぐる騒動に欠けた視点 加害者への怒りと原因の推察ばかりでは非生産的
しかし、ほとんどの人が笑えないどころか怒りを感じるレベルの行為を「面白い」と思う感覚は明らかに異常。しかも迷惑行為に至る動機が「SNSにアップするネタがほしかったから」というのは首をひねらざるをえません。そんな迷惑行為をした人も幼児のころはそうではなく、やはり何らかの影響を受けて感覚がズレてしまったのではないでしょうか。
長年コンサルタントとして悩み相談を受けていますが、SNSが普及した2010年代以降は年齢層を問わずこのように、「感覚のズレた人が増えた」と感じることが何度もありました。自分への意識は高く敏感だけど、他人への意識は低く鈍感。自分の嫌悪や怒りには敏感なのに、他人の嫌悪や怒りを想像しないから、「これくらいはいいだろう」「それは絶対にダメ」という境界線がわからない。「私」「僕」「自分」などの主語で発信するSNSを多用している人ほど、このような傾向が見られがちです。
そんな感覚のズレを生んでいる最大の原因は、“教えることやコミュニケーションの放棄”によるものでしょう。家庭では「子どもに嫌われたくない」「自分のことで手一杯」、学校では「学級崩壊が怖い」「保護者からの苦情は避けたい」、職場では「話が合わない」「ハラスメントのリスクがある」などの理由から、さまざまなシーンで教えることやコミュニケーションの絶対量が不足しているように見えるのです。
では、教えられない人が、誰から何を学び、どんな影響を受けるのか。もし「自分と近い」と思った人が偏った考え方の持ち主で、他者感情の理解が不得意なタイプだったら、影響を受けることがリスクに直結します。たとえば「SNSなどで目立つこと」を求めたときに、迷惑系YouTuberなどの影響を受けてしまう危険性は否めないでしょう。
親子ともに再教育が必要な理由
そうならないために重要なのは、家庭、地域、学校、企業、各種団体などのさまざまな場所で教えるという行為を地道に続けていくこと。さらにそれをするうえで、「子どもだけではなく、あらゆる年齢層に教えていく」というスタンスが求められます。現在ネット上では、迷惑行為が多い年齢層とみなして「Z世代叩き」のような現象が見られますが、世代でくくることは適切とは言えないでしょう。
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