精神科医が語る「学校嫌いの子」に勧めたい考え方 「苦手」は本当に克服すべきことなのか?

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10代の頃には、夢や希望がふくらむものです。「勉強をがんばりたい」「運動もうまくなりたい」「友だちがたくさんほしい」「趣味でも一目置かれるようになりたい」というように、叶えたいことがたくさん出てきます。ほかの人ができていることを、自分もできるようになりたいと願う。でも、なかには叶わないこともある。それで頭がこんがらがって悩むわけです。

そんなときは、何もかもを追いかけて無理に努力をするのではなく、いくつかのものはあきらめて、自分の行く道を決めることが大切なんですね。そうすれば「みんなと同じようにできない」という悩みは減っていくんです。

「君は変われる」と言ってむやみに励ましたいわけじゃない

「好きなことを探そう」「自分のスタイルを決めよう」と言われると、「前向きに変わらなきゃいけない」という印象を受ける人もいるかもしれません。 

確かに、世の中には「君は変われる」と言って若者を勇気づけようとする人もいますが、私はみなさんが変わらなければいけないとは思っていません。 

人によって、変わりたい気持ちの強さは違います。「こういうところは変えたい」と思うことがあれば、変えてもいいでしょう。「こうなりたいけど無理だ」「自分にはできない」と思うのなら、変わらなくてもいいと思います。何も変えなくても、そういう考え方を知っているだけで、楽になることもあります。変わらなくてもいい。知るだけでもいいんです。 

「そのままの君でいい」と言いたいわけでもない 

ただ、私はみなさんに「そのままの君でいい」と言いたいわけでもありません。最近よく聞く言葉ではありますが、そう言われて安心できるかというと、そうでもないですよね。

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私がみなさんに伝えたいのは、「あなたは変わることも、変わらないことも選べます」ということです。

そもそも人生は、変わるか変わらないかの二択ではありません。「この部分は変えるけど、ここは変えない」という選択をすることも多くあります。

そういう意味では、みなさんには「変えなくていい部分」を見極めてほしいと思います。自分の好きなこと、自分らしいやり方が「変えなくていい部分」です。自分らしさを大切にしながら、それ以外の部分はまわりの人にも合わせていく。その見極めができれば、心地よく過ごすことができます。

本田 秀夫 信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授

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ほんだ ひでお / Hideo Honda

精神科医師。医学博士。特定非営利活動法人ネスト・ジャパン代表理事。1988年、東京大学医学部医学科を卒業。1991年より横浜市総合リハビリテーションセンターで20年にわたり発達障害の臨床と研究に従事。その後、山梨県立こころの発達総合支援センターの初代所長などを経て、2014年より現職。発達障害に関する学術論文多数。英国で発行されている自閉症の学術専門誌『Autism』の編集委員。日本自閉症協会理事、日本自閉症スペクトラム学会常任理事、日本発達障害学会評議員。2013年刊の『自閉症スペクトラム』(SBクリエイティブ)は5万部超のロングセラー。

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