元詐欺師が激白「高齢者をだます」手口の一部始終 特殊詐欺を「支える」さまざまな業者

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ーー65歳以上の高齢者をターゲットにするのはなぜですか?

認知機能が衰えているのと、お金を持っている人が多いからです。高齢者なら貯金を取っても年金があるから暮らしていける。そう思うと、罪悪感が多少は薄れます。本当にあくどかったと思います。

一番の狙い目は、相談する相手が少ない一人暮らしの高齢者です。詐欺師にとって最も避けたいのが、狙った相手が誰かに相談すること。だから誰にも相談しない環境が一番いい。孤独な高齢者が狙われるのは、今も昔も変わらないでしょう。

ーーだまし取ったお金の取り分は?

まずは現金を直接受け取る「受け子」のグループに3割を渡します。さらにマニュアルをくれていろいろと手配してくれた人に1割。それで残りは6割になります。

そこから経費を支払います。先ほどの名簿代や電話代、事務所の家賃などです。電話機の番号が警察にばれそうになったら、飛ばさなければ(入れ替えなければ)ならない。1台手配するのに5万くらいはかかります。ただ、経費がかさむのは最初だけ。電話機の手配と、不動産屋に支払う仲介手数料などです。

ちまたには犯罪に利用するとわかっていて、物件を貸してくれる不動産屋があるんです。使い勝手のいい物件をピックアップしてくれ、事務所の名義人になる人も探してくれる。不動産屋には通常の仲介手数料に上乗せして10万〜15万円くらいを現金で直接渡す。もちろん、帳簿に載らないお金です。小遣い稼ぎという感覚でしょう。

事務所を借りる以外にも、被害者からの現金の受け取りも不動産屋と結託して行いました。指定した時間だけ空き物件の鍵を開けてもらい、その部屋で受け子を待たせる。被害者にはそこが事務所だと伝えて、現金をレターパックで送らせます。足がつかないように、2、3回使ったら同じ部屋はもう使いません。

詐欺を「支える」さまざまな業者

ーー詐欺を実行する事務所にはどんな物件が使いやすいのでしょうか。

角部屋で1Kか1DK、鉄筋コンクリートで音が響かない部屋。防犯カメラがついていないなどの条件があります。小さい部屋は一人暮らしが多いから、昼間はだいたい人がいない。あとは同じ建物内に大家が住んでいないことです。要するに周りの目を気にする必要がない物件です。

インターネットの電波状況も重要です。企業や老人ホームを装って電話をかけたり受けたりするので、電話がブツブツ切れたら怪しまれる。

ーー使用する電話は固定電話ですか。

インターネット回線を使ったIP電話です。「03」でかけることもできるし、「03」で受けることもできる。電話機も架空の名義のものを手配します。こうした電話機を手配してくれる携帯レンタル業者があるのです。

携帯レンタル業者は法人名義でキャリアから携帯を契約します。それを客に貸し出す際には本人確認のために客の身分証明書が必要になりますが、レンタル業者が偽造の身分証明書を作ってくれるため私たちは架空の名義で借りられ、足がつかない。だから万が一、警察がレンタル業者に客の照会を求めても私たちにはたどりつかないのです。

レンタル業者には2〜3週間に1回、8万〜10万円を支払いました。支払いの際に「最近どうですか?警察の照会とかありますか」と聞いたりして、情報交換もしていました。

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