元詐欺師が激白「高齢者をだます」手口の一部始終 特殊詐欺を「支える」さまざまな業者
ーー被害者が聞き入れてしまうと。
初めに小さな要求をのませ、最後には大きな要求を通す「フットインザドア」という手法です。その後、老人ホーム職員役が老人ホームZ社を名乗って電話をかけます。「申し込みには審査がある」と言って、金融資産や預貯金額を聞き出す。審査に通ったら、再びはじめに電話をしたX社から電話をかけ、「入居金はうちが支払っておく」と伝えます。
被害者:いや、僕は何も知らなくて……。
老人ホームに問い詰められて焦った被害者はX社に電話をかけます。X社は「いや、大丈夫です。変なこと言わないでください。それ言っちゃったらちょっとあれなので」とごまかします。そこに老人ホームZ社から再び電話がかかってくる。
被害者:いや、違うんですよ!
老人ホームZ社(詐欺グループ):名義貸しは犯罪ですよ。警察に捕まりますよ。
こうして被害者を追い詰めて口論になった末、被害者の話をよく聞きます。「わかりました。それならあなたは悪くない」と味方に回るのです。喧嘩をした後に仲良くなると距離が縮まる。喜怒哀楽を与え、判断能力を鈍らせるのです。
「名義貸しは犯罪ですよ」と恐怖を植え付けた後に、「あなたを助けたいから、一度この物件を買いましょう」と解決策を示す。老人ホームZ社の担当者は、被害者を助けるために自分もお金を出すと伝えます。要するに「あなたと僕は一心同体ですよ」と。被害者は「一緒にやってくれているから、がんばろう」と思わせる。いろいろな心理を突いてお金を出させるんです。
女性や教養人がだまされやすい
ーーどのような人がだまされやすいのでしょうか。
電話を切らずに人の話を聞いてしまう人や、自分はだまされないと思っている人です。金融の知識がある人も多い。教養のある人はプライドが高く、人に相談しなかったりするんです。
高齢の女性はターゲットになりやすい。話を聞いてしまう人が多いからです。電話口であっても「○○さんは本当に声がかわいいですね」と褒められると嬉しいもの。褒められて嬉しくなると、親近感がわくじゃないですか。相手が何を言ったら喜んでくれるか、信用してくれるかをつねに考えていました。
ーー詐欺被害に遭わないための対策はありますか?
まず固定電話の電話番号を変えることです。もしくは電話機を最新の迷惑電話防止機能付きのものにすること。みなさんも実家の電話番号は何十年も変わっていませんよね。昔からある電話番号は名簿として出回っている可能性があります。
電話でお金の話をされたら詐欺だと疑い、すぐに相談できる相手がいることも重要です。ですから、高齢の家族がいる人は1週間に1回でいいので電話をするなど、日頃からコミュニケーションを取ってほしい。
だまされないためには、表面だけ、見た目だけの情報を信じず、裏側に何があるかを考えることも重要です。
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