コンビニの「セルフレジ」は当たり前になるのか 酒・たばこ「非対面」の販売実現でも残る課題

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だが、今年に入り、外食産業が復調したことで人手不足の懸念が再燃している。「コンビニがバイト要員として頼みにしていた外国人留学生が戻ってきていない」(前出の本部社員)ことも一因だ。

首都圏でファミリーマートを運営するオーナーは、「最近、アルバイトの面接にいい人が来ない。仕事のできない人を採ってしまうと、今いる優秀な人が辞めかねないので、数合わせのための採用はためらう」と現状を話す。とはいえ、コンビニバイトは数年で辞めていく人が多い。補充できなければ人手は足りなくなる。

そうした危機に対応する策として、セルフレジへの期待は大きい。

全店で導入済みのローソン

ローソンはセルフレジを全店で導入済みだ。無人のセルフレジとしても、有人のレジとしても使える二刀流タイプのレジだ。アルバイトの確保状況などに応じて使い分けられる。レジが3つある店であればそのうち2つを有人、1つをセルフとして使うケースもある。

東京駅近くのファミマの無人決済店舗。天井にある多くのセンサーが自動判別するため会計時の商品スキャンは不要(写真:梅谷秀司)

ファミリーマートは、国内店舗の4割にあたる約6700店でセルフレジ約7700台を導入。セルフレジのみの無人決済店も12ある。無人決済店は、近隣の母店が管理し、商品の仕入れや陳列は母店の店員が行う。酒やたばこの購入時の年齢確認も、母店の店員がセルフレジのカメラを通して行っている。

ファミマの狩野智宏執行役員は「(無人決済店は)運営コストが下がるので、これまで出店できなかったような場所でも出せるようになる」と意義を説明する。

セルフレジの導入費用はコンビニ本部が負担するのが一般的だ。導入によって節約できる人件費は加盟店オーナーが支払っているため、一見、本部のメリットは小さいように見える。

そのためか、セブンはセルフレジの導入拡大には慎重だ。セブンはこれまで「セミ」セルフのレジを積極的に導入してきた。店員が商品をバーコードで読み取り、客が決済の操作を行うもので、必ず店員が必要なタイプだ。客がスマートフォンで商品を読み取って決済するスマホレジや、無人でも有人でも使える二刀流タイプのセルフレジなども試してはいるが、その導入店舗数はすべて合わせても100店舗程度にとどまる。

とはいえ、人手不足が深刻化すれば、営業時間が減りかねない。オーナーが穴を埋めるしかないが、長時間労働にも限界がある。長時間労働が常態化すればオーナーの離脱による閉店や、24時間営業をやめる店が増える可能性がある。セブンも、2025年までに全店舗に1台以上のセルフレジを導入する方針だ。

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