コンビニの「セルフレジ」は当たり前になるのか 酒・たばこ「非対面」の販売実現でも残る課題

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ファミマの狩野執行役員は、「人口減少が進む中で、人の確保はさらに難しくなる。今より少ない人数で店をオペレーションできるようにしないといけない」と危機感を示す。

セルフレジ導入でオーナーの人件費負担が減ることは、コンビニ本部も間接的にメリットがある。

オーナーが支払うコストは増加している。「20年前と比べて人件費が大きく増えた。当時の人件費は月120万~140万円くらいだったが、今は180万~200万円くらいかかる」と、ある元コンビニオーナーは語る。

コストが増える中、オーナーの間では、コンビニ本部に支払うロイヤルティの引き下げを求める声が強まっている。セルフレジ導入で人件費を抑えられれば、ロイヤルティを下げなくてもオーナーの利益が確保できるようになる。

普及には高いハードル

だが、セルフレジの普及が一気に進むかと言えばそう簡単ではない。あるコンビニの幹部は「酒・たばこをセルフレジで買えるようになったのはありがたい。しかし、それは既定路線。これで一気にセルフレジが拡大するわけではない」と指摘する。

アパレルやスーパーなど他業界ではセルフレジのみの店舗も増えている。それは店舗の広さを生かして大きなスペースを用意し、客の動線を確保しているからだ。一方のコンビニは限られた狭い店舗で営業しているため、セルフレジの配置が難しい。

ローソンのように有人レジと切り替えられるタイプであれば、客の動線上に配置できるが、店員が立っていないとレジと認識されず、セルフレジを利用しない客も多い。仮にセルフレジと認識できても、客がスキャナーをつかんで商品にかざさなければならないなど手間がかかるため、有人レジのほうを利用する客は多い。

一方で、ファミマのように有人レジとは別の場所にセルフレジを置く場合、場所の確保が難しい。

動線でわかりやすいのはレジ横だが、そこに十分なスペースを確保できない店も多い。かといってドア近くに置くと万引きが多発する。実際、一部店舗ではドア横のセルフレジで商品をスキャンするふりをして、隙を見てドアから逃げてしまう万引きが多発し、セルフレジの使用が中止になっている。

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