「どうした? マドンナ」整形批判への反論に矛盾 女性への年齢差別に自ら囚われた姿に哀れみ

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それは、世の中の流れを逆行させる。先にも述べたように、ハリウッドには女性に対する年齢差別が明らかにあるものの、近年は少しずつ変化が見えてきているのだ。

2018年にはジェーン・フォンダ(85)、ダイアン・キートン(77)、キャンディス・バーゲン(76)、メアリー・スティーンバージェン(70)が主演する『また、あなたとブッククラブで』がヒットし、5月には続編が北米公開予定だ。

年配女優にも活躍の場が提供され始めた

また先週北米公開されて良い数字を稼いだコメディ映画『80 for Brady』の主演は、ジェーン・フォンダ(85)、リタ・モレノ(91)、リリー・トムリン(83)、サリー・フィールド(76)といった女優だった。

サンドラ・ブロック(58)やジェニファー・ロペス(53)も、自分たちより若い男優を相手にロマンチックコメディに主演しては成功させている。女優の年齢による限界についての間違った神話は、今や崩れてきているのである。

どの国でも高齢化が進む中、年配の女性観客は、自分と同じような年齢の女性たちがイキイキしているのを見たいと思っている。もちろん、それらの女優たちは一般人に比べて外見に投資はしているが、明らかに整形だとは見えないかぎり、それもまた励みになるというものだ。そういう女性たちがもっと活躍することで、少しずつ常識が修正され、女性にとって生きやすい世の中になる。

マドンナにも、そのひとりでいてほしい。ずっとかっこよく生きてきた彼女は、そう期待される女性だ。今回も、「そうよ、私は整形したわよ。そのどこが悪いの? やりたい人はやればいいじゃない。私はこれからもやるわ」と堂々と返してくれたら、まだ良かった。せめて自分で選択し、決断したことについては受け止めてほしかったなという思いが、どうしても拭えない。

猿渡 由紀 L.A.在住映画ジャーナリスト

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さるわたり ゆき / Yuki Saruwatari

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒業。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場リポート記事、ハリウッド事情のコラムを、『シュプール』『ハーパース バザー日本版』『バイラ』『週刊SPA!』『Movie ぴあ』『キネマ旬報』のほか、雑誌や新聞、Yahoo、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。

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